仕事があるって、なんて喜ばしいことなんだろう。
ELANを含め、雑誌5件のお仕事。
専属はC&FとELAN・・・あとは、忘れた。
えと、混乱しすぎて覚えてないんです。
そういうわけで、今は仕事が週に三件くらいあります!
C&F
今日もはご機嫌だった。
朝玄関であった柾輝ににっこりと笑みをかけて、上機嫌で教室へ行く。
今まで恐かった教室も、今は平気だ。
今日、翼は朝から仕事だそうで学校に来ていない。
大変そうだなァと思う反面、羨ましいのが正直なとこ。
「ねぇ、」
「うぁっ、なに、どうしたのっ?」
「さぁ、ツバサのペアのこと知ってたじゃん?何で?」
「えっ、えと、それは・・・」
「もしかして知り合いなのッ?だったら、」
「ち、違うよっ!」
見事に学校はの話題。
ツバサのペアってこともあるけれど、彼女たち曰くアタリだそうで。
上機嫌だが内心冷や汗をかく場面もあった。
「いいなぁ、は・・・お兄さんもかっこいいんでしょ?」
「・・・・・・っ、そんなこと・・・」
「美形が集まる形質なのかねぇ。羨ましいぞ、コラ」
できることなら、そうしてほしい。
というか、も美形の中に入ってるのかな?
でしたら私が本人ですから、ね・・・。
兄ちゃんという言葉が出てきて、は少しへこんでいた。
できれば、関わりたくない言葉だ。
友達の美形についての文句と語りは、を無視して続いている。
助けて欲しいくらいだった。
「なぁ、いるか?」
「・・・柾輝!」
天の恵み!と呟いて、はその声と同時に駆け寄った。
呼んだ当人である柾輝は目を丸くして驚いていた。
自分でも教室でここまで正直にいられたことがないので
少し驚いていた。
まぁ、柾輝と大声で呼び捨てしたので、隠れ黒川ファンに
睨まれた驚きもあったが。
い、意外と人気なんだね柾輝・・・!
「どうしたの、わざわざ教室まで」
「今日翼いないだろ、だから俺が伝言」
「伝言?」
は目を輝かせる。
柾輝は意外そうに少し口の端をあげた。
「・・・仕事だよ」
「・・・・・・デートとかがよかったなぁ」
「男同士でか?」
「っ、ばっ、こんなとこで・・・!」
「別に大丈夫だろ。じゃ、俺は伝えたからな」
ヒラヒラと手を振って、一枚のメモを渡すと
柾輝はそのまま帰ってしまった。
え、連れてってくれるとか・・・無し?
気が置けない相手だけにちょっとショックだった。
『今回のお仕事は、雑誌じゃないわ。対談でもない。
まぁ、とにかく行けばわかると思うから、ここに行ってね』
丁寧な西園寺社長の字でそう書かれていた。
続きとして、場所と時間が書いてあった。
あ、よかった、放課後だ。
そう思ったけれど・・・ちょっと待って。何で内容が秘密なんですか!
は溜め息をついた。
授業も順調に終わり、は一度家に戻って着替えてから
指定された場所に向かった。
書かれたとおりの駅で降りて、歩いていく。
昼に柾輝が対談を褒めてくれたので、ちょっと機嫌がよくなっていた。
「あの!」
「・・・へ?」
今にも鼻歌を歌いそうな様子で、柾輝から貰ったガムを口に入れた。
途端、声をかけられた。
その女の子は丸い目をキラキラさせて、きゃっきゃと近づいてきた。
可愛らしい様子だが、腕はがっしとの腕をホールドしている。
「C&Fのさんですよね!?」
「えっ」
「本物だぁ!あ、あの、一緒に写真撮ってください!」
「私もお願いします!」
はじめに声をかけてきた女の子以外に、どんどんと女の子が集まってくる。
あっというまに、囲いが出来た。
男としては嬉しいんだろうけど・・・っ。
「ツーショットでもいいですかぁ?お願いします!」
「笑ってくださいぃっ」
「次こっちお願いしますぅ」
次々と上がる黄色い声。
人気が出たのは嬉しいけど、今の状況はちょっと・・・。
というか、眼鏡も帽子もしてるのに何でバレるのッ?
服も兄ちゃんので男物の服なのに・・・わざわざ着替えに戻ったのに・・・!
・・・いや、着がえに行ったのは、ただ服忘れただけですけどね。
囲まれてこんな風にされた経験のないは、混乱していた。
どうすればいいの、こういうときって?
まだモードに入ってないので、すごく戸惑っている。
ぐいっ。
思いっきり腕を引かれて、囲いの中から引き出された。
「ったく、迷ってんなよなぁ!つーことで悪いな、こいつは連れてくぜぃ」
バイバーイ☆と言う言葉と同時に、走り出す。
腕を持たれたままのは為すがままだ。
囲んでいた女の子たちの声が遠くに聞こえた。
ようやく止まったかと思うと、そこは公園だった。
ちょうどよくベンチの前だったので、二人してそこに座り込む。
はぁはぁとは肩で息をしていた。
引っ張って助けてくれた人は、まったく知らない人だった。
茶色のくりくりした髪。丸い目。
愛嬌がある顔だった。
「あ、ありがとうございました・・・っ」
「いいってことよ!何かすごい困ってたみたいだったし」
「えぇっと、お礼をしたいんで、お茶でも・・・」
「マジ?・・・嬉しいけどゴメンな、俺これから仕事あるから」
「仕事?・・・・・・・って、あぁ!」
顔面蒼白。
時計を見てみると、約束の時間を過ぎていた。
新人が遅刻なんて考えられない・・・。
そんなの様子を察したらしく、その人は尋ねてきた。
「お前もか?」
「・・・・・・はい」
「俺も遅刻ー。まぁ、いっか」
「じゃあ、お名前だけでも」
助けてもらって何もしないなんて、失礼なことしたくない。
その人は、にかっと笑った。
すごく愛嬌のある笑顔だった。
どこかで、みたことのあるような・・・・・・?
「俺?俺の名前は若菜結人。知らない?」
ま、マジですか!
はその場で飛び上がりそうだった。
かけ無しの理性がそれを止める。
知ってる、なんてものじゃない。結構マイナーな方だけど、大ファンだ。
大好きな、バンド。
「ま、マジッ?若菜結人、さん!?」
「お!何々、ファンなわけ?サインいる?」
「いりますいります!」
テンションが上がって、はいつの間にか仕様だった。
目が輝く。
「じゃあ、お前の名前は?」
「あ、すみません!、って言います」
結人がマジかよ!と大声を出して、の顔を近づける。
は二重の意味で驚いて、目を点にする。
「お前、本当に?」
「は、はい、そうですけど・・・?」
「なんだお前かよぉ」
結人は親しみを込めた笑みを浮かべる。
すぐに仲良くなれるような気がした。
「なんだ、じゃあいっしょに行こうぜ」
「は、はい!」
元気よく返事を返すと、は結人の後をついて
少し速めのペースで歩き出した。
そのときの結人の表情が、どのようだったかなんては知らない。
大ファンの人に会えた喜びを、ただ噛みしめていた。