私は、一応ツバサと同じ事務所の女モデルの、です。

     ・・・・・・ぶっちゃけ、あんまり売れてません。


     女の色気とか可愛さって、なんだろうね?

     それを盗む為にツバサを見てたのに、・・・・・・・・・男って、あり?















          C&F       
     


  





   






     「ぎゃぁぁぁぁぁぁーっ!!」







    

     ツバサの引っ張るがまま引きずられていく

     その声は、賑わっている面接会場や控え室にも微かに響いた。

     こんな大声なのによく聞こえなかったなぁ。

     流石、防音バッチリですね。・・・・・じゃなくて。



     私はいつまで引きずられていくんだろう。
  
     もう、泣きたいよ。








     「あら、ツバサじゃない」

     「・・・・・玲」

 




     ピタッ、とツバサが立ち止まり、は安堵した。

     同時に、助かった・・・と萎れた野菜のようにぐったりとしている。

     
     ・・・・・・・・けど、ツバサからしてみれば、助かってなかった。   

     ツバサを呼び止めた社長は、にこ、と微笑んでいた。



   

     「どうしたの、こんなところで?」

     「・・・・ちょっと、ね」

     「もうすぐオーディション始まるでしょう?・・・・しかも、何持ってるの」

   




     社長はに視線を向けて、首をかしげた。


     持ってるって・・・・私はモノですか?人権侵害とか無いんですか。

     そう心の中でツッコミを入れたが、実際、連れているというよりも

     持っているという表現の方が正しい状態だった。     


     下ろして・・・とが請うと、ツバサはあっさりと手を開放した。


     その場で尻餅をつかないように頑張ったが、その甲斐なくはその場に尻餅をついた。

     うん、地味に痛い。しかも本日二度目でございます。





     「いてて、この鬼・・・・ッ。ってそれより、オーディション!」
  
     「そうよ、ちゃん楽しみにしてたじゃない」

     「・・・オーディションどころじゃないんだよ」

     「・・・・・・・・どういう意味かしら?」

     「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 
 





     な、なんか社長が恐い気がする・・・・・。

     その証拠に、ツバサは何もいえないかのように黙ってしまった。

     さっきの気迫から、強気だと思ったのでなんか意外な感じだ。





     「今回のオーディションの大切さ、わかってるでしょう?」

     「・・・・・・有名な、アイツの新ブランドのイメージモデルのもう一人を決めるもの。

      これにうかれば、成功すれば有名になれること間違いなし。

      全員落とすこともありえるし、あの人が気に入らなければ契約解除」





     ツバサは黙っていた口を開いて、今回のオーディションについて説明した。

     そ、そんなにすごいのだったんだ・・・・とは一人驚いた。

     それに、『アイツ』って誰さ?





     「わかってるじゃない。じゃあ、何で?」
 
     「・・・・・・・・・・・・・・腹が、痛くて」
 
     「・・・・あら大変。便秘?生理痛?陣痛かしら?」




     
     もちろん嘘だとわかりきってるのに、あえてふざけた感じで社長は言う。


     生理痛や陣痛って、女しかならないと思うんですけどー!         

     しかし、のいる前でそういうことを言うのだ。がツバサは女と思ってると

     知ってのことだ。女同士だから、こんなことを言うのだろう。





     「あっ、ツバサちゃん、いたいた!どこ行ったかと思った、控え室にもいないからさ」

   



     微妙な空気の中、明るいスタッフの声。

     この空気に気付いていないようで、ツバサに向かって

     まったく、と笑っていた。



 
     「そろそろオーディション始めたいんだけど・・・・、って西園寺さん!

      どうしたんですか、こんなところで?」

     「いえ、ね。ツバサがお腹が痛いって言うから・・・・・・」
  
     「えっ、本当?大丈夫っ?」

     「ちょっと・・・・だめ、そうです」

     「どうしようか・・・・・・病院行ってきたほうがいいんじゃないかっ?」





     スタッフの人はいい人のようで、ツバサの嘘に全く気付きもせず

     その上、心配までしてくれている。

     というか、私の存在は全くの無視ですか。





     「・・・・・・・・・。そういえば、審査員の人が飛行機が出なくて、欠席するって聞いたわ」

     「本当ですか!?じゃあ、今日は中止かな」

     「ちゅっ、中止ってできるんですか・・・・っ?」
 
     「うん、何しろブランドの原案者がいなければ意味がないからね。中止と言うか、延期」

     「じゃあ、私はそれを伝えてきますね」

     「あっ、俺が行きます。西園寺さんは、ツバサちゃんを病院へ」
      


     

     スタッフの人は慌てた様子で駆けていった。

     ちゃんと安静にしとくんだよー!お大事に!という優しい言葉を付け足しながら。
    
 
  

      
    
     「・・・・・・・じゃあ、話を聞きましょうか。、ツバサ」

     


  

     そういうと、社長はツバサとを引き連れて、颯爽と会場を後にした。    



















     

  
     オーディション会場からでて、止めてあった社長の車に乗せられた。

     すごい、黒塗りだよ。金持ちだよ・・・・!



     社長は優雅に一人座り、その向かい側にとツバサが座った。

     向かい合うような座り方の車に、は貧富の差を感じた。

    
     がすっかり車に目を輝かせていると、ツバサと玲の間にとても冷ややかな空気が。


     玲はにこにこと微笑んでいて、ツバサはあさってに向けていた視線を

     恐る恐るといった感じで社長に向けた。








     「・・・・・・と、いうわけで玲」

     「オーディションも仮病で延期させたりして・・・・・・・どういうことかしら?」

     「・・・・・・・・っ、自分だって助け舟出したくせに」

     「しょうがないでしょう。あなたがいくら演技上手でも、どうみてもボロがでそうだったもの」

     「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・着替え見られて、バレた」



      
      
  

     社長はあらあら、と芝居がかった感じで口元に手を当てる。


     その顔に浮かぶ微笑に、明らかにツバサがおびえている気がするのは、気のせいだろうか?

     は意外に黒かった社長を見て、内心冷や汗ダラダラだった。




 
     
     「あら、バレちゃったの。着替え見るなんて、もお盛んなのかしら?」
   
     「お盛んって・・・・・私は盛りのついたメス猫ですか!そりゃあ、ちょっとこの頃可愛い男の子に目がないし

      女の子も可愛く見えてきますけど・・・・って、何言わせるんですか!」

     「あなたが勝手に言ったんでしょう」

     「うっ。そっ、それにあれは事故で・・・・・!」

 


  
   

     そうだ、ある意味事故だ。


     スタッフが行った部屋に言っただけなのだから、は無実だ。

     だいたいなんでだけ別部屋だったのだろう。スタッフの陰謀か、ミスなのか。

   
     別に見たくて見たわけでもないし、なにしろ女の着替えなら見ても全然問題ないのだ。

     そう、女の着替えなら。



     ・・・・・・・・・・・まさか、こんなことになろうとは。


        

     必死に首を振って弁解するに、社長はそうね・・・・と何か考え込んだ。

     ・・・・かと思うと、急に楽しそうな表情を浮かべた。

     そう、まさににっこりという擬音がピッタリの、黒い笑み。



  
   

     


     「じゃあ、。あなたには明日から、」
   
     「あ、明日から・・・・・・・?」
 
     「・・・・・・・男モデルとしてデビューしてもらおうかしら」

     「・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁぁぁぁぁぁっ!?」

 




  

     の人生の中で、一番の爆弾発言。

     っていってもまだ15年くらいしか生きてないけど。
 
     あ、ちなみに二番目はツバサが男だったってことだ、今のところ。
   
     さっきまでは一番だったけど、ランクダウン。






     「だってそうすれば、二人は同じ秘密を共有する仲間ってことになるでしょう?」
  
     「だっ、なんでそうなるんですかっ!」

     「幸いあなたは女も出るとしてあまり売れてない上、あのこともあるし。

      そして・・・・・気付いてないみたいだけど、こんな素敵な容姿、使わないのは損よ?」
 
    
 


   
     あ、頭がついていかない・・・・・。

     今日はなんて容量オーバーな日なんだろう。私の頭は急な展開についていけるほど若くないって。
  
 
                
     何か言おうと口を開くが、パクパクと空気を食べるだけになっている

     社長は更に笑みを深くする。

     
     ・・・・あぁ、社長美人だよ、でもそれが本当に恐ろしいよ・・・・!

    
 





     ついに、黙ってことを見ていたツバサが口を開いた。

     ・・・・・その顔には、何か面白い悪戯を思いついたような微笑み。

     わわわ、そ、そっくりだよその笑顔・・・・・!さすがはとこ、血縁関係、親戚だ・・・・!
 
 



   
  
      
     「それ、いいね。面白そう」

     「ツ、ツバサさんまで・・・・・っ!」

     「パートナーも乗り気だし、決定ね。ちょうど今日のオーディションの新ブランドのがあるし。
  
      たしか二人ペアってことだったから、もう決定したも同然ね」







     え・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・っ!?






     「な・・・・・な・・・・・・・っ」

     「じゃあ、面接は・・・・ないと思うけど一応向こう行ってきて、事務所に帰ってきてね」
 
     「あ、あのっ、社長、拒否権は・・・・っ?」 
         
     「あるわけないでしょう?・・・・じゃあ、ツバサ。フォローよろしくね」

     
 


     

     な・・・・・、何でそうなるのーっっ!? 



     の叫びも、クスクスと笑っている社長の声をBGMに、むなしく響くだけだった。





  








     
     ・・・・・・・・こうして、逆転生活が、スタートした。