未だに自分のおかれた状況がわかってません。

     バカじゃないの?と思われるだろうけど、普通の反応だと思う。

     だって、ねぇ?















        C&F















     呆然としたまま、社長に車で送られて、いつの間にか家についてて自分の部屋で。

     親に、風呂場にぽいっと捨てられるように入れられたので風呂に入って。

     どうやって晩飯を食べたかも覚えてないけど、寝ていたようで。


     気が付いたら朝だったので、はしょうがなく学校へ行った。





     「みてみてっ、新作ー!」
 
     「あ、ホントだ!ツバサ、めっちゃ可愛いーv」

     「“EDEN”のときのツバサもいいけど、私は“Seed”派かなぁ」

     「そういえば、またいくつか新しいやつ出るんでしょ?」

     


  
     もちろん学校では翼の話題で持ちきり。

     昨日は発売日だったので、よけいに盛り上がっていた。



     はそんな女子のグループから離れた、自分の席に座った。
   
     前の席は、仲のいい友達。

     きゃーきゃーと聞こえる、女子の雑誌トークはヒートアップしてきて。
     
     二人は耳を軽く塞ぐように肘をついて話していた。     



     ・・・・・・そんな友達にも、言えないことはたくさんあるものでしょ?

     たとえば、昨日のアレとかアレとか。     





     「あー、そういえば昨日って“C&F”のオーディションって聞いたんだけど」

     「あ、それ・・・・なんか、もう決定したらしいよ?」

     「えっ、マジッ?凄い数いたじゃん、あれ」

     「あー・・・・・うん、でも決まった、らしいよ」

     「誰っ?、知ってるんでしょう?」

     「・・・・・・・・・・・・・・・・そ、れはー・・・」




  
     珍しく興味心身で聞いてくる友達に、は誤魔化すように視線をそらす。


     さすがに、それは男装した私!とかいうわけにもいかないし。
     
     モデルをやってることは、雑誌に何回か載ったことがあるので知ってるかもしれないけど、
 
     ツバサと同じ事務所とは誰も知らないだろう。

     は、あまり売れていないのだから。・・・・・・・・うわ、自分で行ってて悲しいわ。

   
   
     誤魔化そうと視線をそらしていたが、さすがにツバサのことだけにしぶとくて。

     どうしよう、とが迷っていると、





     「なぁ、この組にっているか?」        
    
     「あ、はいっ、います。・・・ー!」
 

  


     と、声をかけられた。

     どうやら、他の組の人か他学年がきたようだった。


     誰だろう・・・・?もしかして告白?

     そんな妄想をしつつ、少しドキドキして呼ばれた入り口の方へ行くと。





     「よぉ、さん?」

     「・・・・・・・・・・わーうーぎゃーびゅわーっ!」

     「ちょっと、借りてくぜ」






     状況整理がつかないまま、ただ奇声をあげ続けている

     その人物はずるずると引っ張っていった。     
 






     ・・・・・・・なんか私、こういうの多くない?






    
     顔もろくに見れないまま、連れられるがままに進んでいくと、

     一般生徒はあまり近づかなくなっている階段まで来た。



     そこでパッと手を放されて、は引っ張ってきた人物の顔を見ることができた。

     いや、教室で一回見たんですけどね。



     色黒で制服をだらしなく着ている人が、ちょうどの目の前にいた。

     身長は高いし、雰囲気的に大人っぽくて結構モデルでもいけそうな感じ。

     ・・・・あ、なんかこの人ちょっと癒されるかもしれない。じゃなくて!

     どっかでみたことがあるような・・・・・・・・? 

         
    
   
 
     「あの、どちらさん?」

     「あぁ、俺は黒川柾輝。ちょっと頼まれてというか命令というか

      無理矢理出されたんだけど、あんたを呼んでこいって」

     



     く、黒川柾輝!

     危うくはそう叫びそうになった。



     見たことがあるような、どころじゃない。

     ちょっと近寄りがたい不良というのに分類されるのだろう、彼ら。
 
     この中学ではかなり有名人だ。

     しかも、年下じゃん!とかは一人心の中でつっこんだ。
 
   
 

     そういえば、この階段は彼らの溜まり場だったっけ。

  



     「そりゃあまたご苦労様で。・・・・えっと、誰に頼まれたの?

      カツアゲ出切るほど金持ってるわけでもないし、恨み買うようなことはしてないと思うんだけど」 
      
     「理由は俺も知らないけど、呼んでこいって命令だからな」

     「へーえ・・・・誰なの、そんな物好き」     
    
     「それはあんたも良く知ってると思うぜ」

  




     へ?とが聞き返すより早く、目の前の階段の一番上から声にかき消される。




 
     「忘れたとは言わせないよ?」
 

   



     一番上の段に座っていたのは、赤茶の髪の小柄の少年。

     は一瞬、時が止まったかのように固まった。
   


  
     「つ、ツバサさんッ!」
 
     「その通り。ちなみに本名は椎名翼だから」

     「同じ学校だったんですかっ!?」

     「ついこの間、お前が学校休んでたときに転校してたんだよ」


  

     高みから見下ろされる。結構、屈辱だけど。

     ・・・・・かなり似合っているから悔しいくらいにかっこいい。

     サル山の大将、というよりも王者の高み、といった方がいいのだろうか。     
     




     「黒川君使って呼び出したりして、一体・・・・な、何の用ですか?」

     「あんたが動揺しまくってうっかり情報を漏らさないように、監視してるってこと」

     「そんな情報を漏らすなんてこと・・・・・っ」

     「しないとは限らないだろ?現に柾輝いわくちょっと押されて戸惑ってたとか言うし?

      ちょうど同じ学校なんだから、しっかり見張っとくからな。
   
      うっかりバラしてみろ、そのときは・・・・・・覚悟、しとけよ?」

     「・・・・・・・・・・・・・っ!!」     


     
  

     
     冷や汗が、背中を流れ落ちた。

     社長とそっくりな、翼の黒い笑み。そりゃあ社長のほうが断然恐いけど。

     しかも、この人たちをまとめてるってことは、相当ってことで。

     ・・・・・・・・逆らったら、どうなるんでしょうか?
          





     「そうそう、。今日は1時に向こう行くから、昼休みに荷物持ってここ来いよ」

     「俺が迎えに行くか?」

     「そうしよう。じゃあ、わかった?」

     「あ、え、う」

     「はいとかうんとかyesでもいいから、返事は?そんなこともいえないわけ?」

     「は、はいっ!」
 
     「よろしい」



 
     

     すると一限目の開始を告げるチャイムがなってしまった。

     友達が誤魔化してくれるだろうし、欠席とか遅刻にはなってないと思うけど。

     しかし、目の前の彼らは全く動く様子もないのできっとサボりなのだろう。





     「え、えっと。じゃあ、私は授業行くんで失礼します」

     「補習受けて、撮影遅らせることのない成績は取れるようにね」

     



     翼はそういうとひらひらとに向かって手を振った。

     自分は出なくても楽勝ってか? ちくしょう、嫌味だ・・・・ッ。

     そういえば、この間の定期考査は転校生がいきなり主席だって聞いたような気がする。

     


     がくるりと踵を返して教室へと歩き出すと、後から柾輝がついてきた。




    
     「・・・・俺も行く」
  
     「へ?何で黒川君まで?」

     「飲みモン買うついで」

     「・・・パシリっぽい」

     「じゃんけんで負けたんだよ。あと、黒川君は止めてくれ。鳥肌が立つ」

     「じゃあ、柾輝で」





     そういってはにっと笑った。


     一瞬、柾輝が面食らったような顔になった気がするが・・・・・・・気のせいか。





     あとで友達に聞いたことだけど。
  

     きっと柾輝がついてきたのは、授業が始まっているのに廊下を歩いていると

     キューピーとかに何か言われるし、サボりとかそういう風に取られてしまうから。

     でも柾輝がいれば「俺が連れ出したんだよ」とかテキトーに言って

     悪いのは自分では悪くないということを示したかったのだろう、と。          






     ・・・・・・・よくわからないけど、きっと庇ってくれたということかな。


   
     思わずふっ、と笑みがこぼれてしまった。
  
     何気ない優しさが、嬉しくて。イメージと全然違う。


     初対面だったのにもかかわらず、そういうことをしてくれたということは

     気に入られた、ということなのだろうか。

     




     「じゃあ、柾輝。また昼休みにね」

     「あぁ」






     は柾輝に手を振って、自分の教室に入っていった。


     年下とか年上とか、先輩後輩とか。

     そんなのは関係なく、仲間になれる気がした。

     柾輝がいるなら、翼さんの辛そうな監視も大丈夫だろう。
  
     そんな、気がした。





     柾輝が飲み物を買ったかは、昼休みに聞いてみよう。