闇の中で、朝がどれだけ恋しいか。
でも、この「ソワール」は違う。
は台本を読むたびに、こんな晩を欲した。
C&F
メイクや衣装、セットの直しが済んで、は入った。
次はが主人公の「ソワール」だ。
シゲと目が合う。
「楽しませてくれな」
そう口だけ笑んで、シゲは片目を閉じた。
を有名にしたのは、そういえばあのPVからだったものなと
今更ながら思い出す。
あれから、自分は成長できていると信じたい。
PVの時は自分と重ねて泣いていたが、もう違う。
俺は、役のキャラクターになれる。
もうツバサのパートナーなんて、呼ばせない。
そうだ、誰であろうと、喰ってやるよ。
監督の声がかかり、撮影が始まった。
同時に、の中でスイッチが入った。
「っ」
大量の涙を流す。
そのままはセットの中を走り出した。
がく、と膝が抜けて倒れこんだ。
救いを求めるように、鏡へと手を伸ばす。
その表情は疲れ、傷付き、苦しんでいた。
そしてその根底には闇に合うたびに蘇る、決して埋まらない淋しさ。
流しても流しても、少しも楽にならないのに涙は止まらない。
ゆるゆると力が抜け、望むだけで手は力なく地に落ちた。
ぱしゃん、と水音が空しく響く。
苦悶に満ちた顔で、は唇を噛んだ。
サラ、との頭上へ、金色に輝く髪が垂れる。
「よぉ、頑張ったな」
声と同時に、ぐいと手を引かれ、前方へ引き寄せられる。
そのままは鏡の中へと入り、しゃがんだシゲの腕の中に納まる。
「ひとりで背負い込まんでえぇ。俺が、おる」
優しい声音に心の中に溢れる苦しさや辛さ、寂しさがとけていく。
シゲはの涙を指で拭って、微笑む。
「いつだって、俺を感じてくれな」
夜の闇も、お前には俺が居る。一人じゃない、いつも一緒だから。
あぁ、とは肯定の息を漏らし、視線が絡み合う。
シゲはそのまま頬を撫で、二人の顔が近づいていく。
「カッ・・・・、!」
カット、と言おうとした監督の声が驚きで止まった。
シゲはなんと、そのままの頬に口付けたのだ。
「っ!!?」
さすがにも驚いて固まった。
我に返って、いっきに顔が赤く染まる。
「っな、なななにを、・・・っ」
言葉にならない。
はパクパクと金魚よろしく口を動かすだけだ。
「ん?あまりにきれいやったんで、つい・・・な」
シゲは気にするわけでもなく、ただそういった。
「俺、男、だっつの!」
「あぁ、そやったっけな。忘れとったわ」
まぁええやんか、とケラケラと笑うシゲ。
はただただ真っ赤になりながら睨むことしか出来なかった。
ちなみに。
その問題のキスの部分は何故かカットされずに、商品を写すことで
少し隠しつつも使用されました。
(さすがにホモ説はマズイので口がついたかははっきりしてなかったけど・・・)