ずっとずっと、一緒だっていっていた。
  
   二人でなら、何だって出来る。

   互いに、互いだけがすべてだって、思っていた。

   手を離すなんてこと、ないと信じていた。













     C&F












   
   『With』の発売まであと三日となった日。

   全国のメディアでとシゲのCMが流れ始めていた。

   今朝テレビをつけたらたまたまそれが映って、は盛大に牛乳を噴いてしまった。

   ・・・他のCMとかもそうだけど、やっぱまだ慣れない。

   


   「、生きてるか?」




   どうやら昨日発売した雑誌にも『With』の広告が載っているらしく、朝から

   女子のテンションはあがりっぱなしだった。

   どんな羞恥プレイ・・・と心の中で半泣きになりながら机につっぷしていた
  
   は、肩をとんとん、と叩かれて顔をあげる。

   
           
   「・・・柾輝」

   「うわ、すげぇ顔」

   
 
   くっと笑って柾輝はいつもの場所へとを誘った。

   廊下を歩いている途中、そういえばと柾輝は口を開く。



   「CMみたぜ。・・・あれってさ、」

   「・・・・・・・・・最後のは忘れてください」



   吐き出すようにいったの言葉に、柾輝は苦笑した。

   どうやら柾輝がみたのは「マタン」の方らしい。


  
   「まぁあいつは有名だからな」

   「・・・え、ほん、もの、なの?」

   「違う、違う。気に入ったら誰にでもするって。翼も一回頬にやられてる」

   「えっ」

   「そんときは動揺して思わずビンタしたっていってたけどな」



   そのときの翼の姿を思い出したのか、柾輝は楽しげに笑った。

   何だかものすごく目に浮かぶ・・・。

   溜まり場の階段について、柾輝は寝転がる。
  


   「そういえば、今日仕事は?」

   「あるよ。一時間くらいしたら、行く」

   「そっか。C&F?」
 
   「違うよ。オーディション、みたい」

   「・・・みたい、って」
  
   「社長がいきなりいってこいっていうんだもん」

   

   昼終わったら行くよ、とは息を吐いた。

   オーディションだと実力が出せないらしいはどうやら
  
   トラウマになっているようだ。
 
   今やっている仕事は指名されてしているので、自身でとった

   仕事はほとんどない。



   「・・・じゃあ俺も一緒に行く」

   「え?」

   「今日直樹たち来ねぇみたいだし、帰る」

   「ちゃんと授業でなきゃダメでしょー?」



   クスクスと笑う
   
   説得力がないのはお互い様だった。

   いや、翼にきいたところは勉強はできるが、わざと手を抜いているかの
 
   ように思えるらしい。
 
   そういえば、こいつ転校してきたんだよな。
   
   前にいた学校がどこかは西園寺社長以外知らない。
   


   「大丈夫、お前よりましな点とってるはずだし」

   「うわ、ちょっと。それひどくない?」
 


   大分打ち解けたな、と心の中で笑いながら、柾輝はとの

   何気ない会話を楽しんだ。

   その間にきたメールで夜に撮影が入っていたことが判明した

   明日朝起きれるかな・・・と項垂れた。



 
   



       


   暇だから、と柾輝はの仕事先まで送ることになった。

   電車で数駅いったところで降りて、歩いていると

   の表情が少し翳る。

      
   
   「?」

   

   緊張しているのかと思って声をかけると、びくりと

   肩を揺らしたが、平然とは返事をした。

   しかし、その視線は少し揺らいでいた。

   あぁ、これは何かある場所なんだなと柾輝は一人納得する。 
 
   それに気づいたらしく、は小さく言う。 



   「・・・・・・実家、に近いの」

   「・・・そっか」

   「まっ前いた、学校にも、近くて、」   
      
   

   何か思い出したくないことでもあるのだろうか。

   は出会った頃のように、自信なさげに口を開いている。
  
   伊達眼鏡の奥にある瞳は柾輝を捉えることがない。        
      

   柾輝はそんなの頭をくしゃりと撫でた。



   「んな顔すんなって。今日は仕事なんだろ」

   「・・・うん。に、ならなくちゃ、ね」

   「話なら俺があとでいくらでもきいてやるから」

   「ありが、」

   
 
   とう、と続くはずの言葉は不自然に切れた。
  
   立ち尽くす。その視線の先にいるのは、一人の男。

   驚いて声も出ないは、何か言葉を紡ごうと口を開くがなにも出てこない。

   その様子に柾輝もその視線の先を追った。


   男は、に気づいて、目を見開いた。
 
   そして、叫ぶ。
  

  



   「!!」






   駆け寄ってくるその男に、柾輝も驚いた。

   そいつは、にそっくりだった。・・・もちろん、にも。


   は溢れてくる感情に必死に蓋をする。

   だめ。だめ。だめ・・・!

   でも零れてしまった、彼の名前。









   「亮、兄・・・」







  

   もう二度と、逢うつもりなんてなかった。 
  
   私のたった一人の、大切な人。