最近、が変わったように思える。
どもらなくなったし、笑顔も増えた。
なんだかなんだかわからなくなることも多い。
・・・・なんか、むかつく。
C&F
終礼が鳴り、はぐーっと伸びをした。
節々から軽い音が鳴り、凝っていた身体が少しほぐれてすっきりする。
今日は久しぶりに全部の授業に出た。
気づいたら数学も英語も日本史もどんどん進んでいて、日本史なんて
平家の世から生類憐みの令にまで飛んでいた。
自分のノートのミッシングリンクに呆然としながら、終始友達のノートを写すので
一日の授業が過ぎていった。
帰ろう、と立ち上がると同時に、悲鳴のような黄色い声。
・・・・まさか。
「」
「やっぱりね・・・」
予想通り、我が飛葉中のアイドル、翼の登場だった。
最近学校にはほとんどきてなかったからか、ファンの悲鳴も大きい。
なんだか、ちょっと背が伸びた気がする。
「今日なんかある?」
「ううん。珍しく直帰」
「じゃあ途中まで帰ろ。柾輝も一緒」
うん、と返事をして翼と並んで歩く。
なんだか最近、眩しい人たちとばっか一緒にいるから
だいぶ隣に立つのに慣れてきた気がする。
それに、よく考えたら私もその部類にいれてもらえるんだよね!
・・・すみません調子のりました。
「そういえば、吉田のオーディション受けたんだって?」
「うん。見事、不採用!」
「・・・あ、そ。明るくいうことか、それ?」
「うっ・・・い、いいの!平馬さんのおかげで結構上手くできたと思うし」
「・・・・ふぅん」
話すのはだいたい仕事の話だけれど、本当、久しぶりに翼と話した。
もちろんその前にあった、亮兄のことは話していない。
楽しい。それだけでよかった。相変わらず忙しいみたいで、少し疲れてみえた。
そんな翼に余計なこと、いいたくなかった。
そしてなにより、時々みせる翼の表情の翳りが、気になったから。
柾輝はそれに気づいたようで、と目を合わせようとしなかった。
・・・なんで?
「!」
靴を替え、校舎から出たとき、友人が自分の名を呼んだ。
すごい勢いで駆け寄ってきた友人は、の両腕をすがるように掴む。
「もう、なんで黙ってたの!」
「えっ、ちょっ、何が?」
「お兄さん!今、校門のところで呼んできてって頼まれたんだけど!」
武蔵森の三上さんだなんて!
と友人は頬を紅潮させ、瞳を輝かして言った。
幸い、下校の時間で騒がしいため他の生徒の耳には入ってないようだ。
だが、隣にいた翼には当然きこえていた。
「三上?」
「えっあのっ、これは事情が・・・っ」
「ごめんなさい椎名君、黒川君。もらっていくね!」
がっちりと掴まれた腕をそのまま引きずるように友人はを
校門までひっぱっていこうとする。
「!たぶん、お前らはすれ違っただけだ」
「え・・・?」
「ちゃんと確認してこい」
柾輝が、引きずられるに向かってそう告げる。
助けてくれるつもりはないらしいが、その言葉は確信的にきこえた。
「お前の思っていた世界と現実が、必ずしも同じとは限らないぜ」
困惑する。
はその真意を問おうとするが、友人の力強い腕に抗えず
その顔を呆然と見つめ返すことしかできなかった。
てか、手!痛いんだけど、ちょっと・・・!
乙女の力はなんとも恐ろしい。
・・・亮兄、どんな頼み方したんだこら。
「何で三上が・・・?」
その場に残された翼と柾輝は呆然とその様子を眺めていた。
兄妹?三上とが?
知らなかった。
が以前いた学校も、家族構成も、現在住んでいるところも。
ばっと翼は柾輝を振り返る。
「お前は、知ってたのか」
「・・・あぁ。この前、偶然」
「そう・・・」
なんだろう、この胸にある靄は。
苛々する。
普通に会話ができるようになったのも
肝心なことは何も話さないのも
俺だけ、知らなかったのも。
むかつく。のくせに。
パートナーだって、仲間だっていったのに。
自分だけ蚊帳の外ではないか。
「・・・・・・っ」
ふつふつと湧いてくる感情を押し殺すように、翼は小さく舌打ちをした。
一方、校門まで引きずられたはハートを飛ばしながら
三上に話しかけている友人を呆然とみて、ため息をついた。
「・・・亮兄」
あいかわらずタラシなんだな、と冷ややかな視線を送る。
三上はふっと笑って、友人に礼をいってから歩き出す。
「話をしにきた」
ついに、腹を括るときが来た。
三上の瞳はこの前のように激情的ではなく、落ち着いていた。
もう時は満ちたんだ、と理解できた。
もう、逃げない。
もう、逃げたくない。
うん、と頷いては三上の後を追った。