やはり私は頭が少し足りていないかもしれません。
だからお兄ちゃんにも色々言われたわけだ・・・。
今まさに、そんな状態です。
C&F
デビュー後からは翼たちと行動することが多くなった。
といっても、昼を一緒に食べるとか、あとは仕事のこと。
C&Fという雑誌の中の人間が、性別逆で同じ学校にいるとは
誰も思ってないところが凄いと思う。
とか、現実逃避している場合じゃないんです、今。
は学校が終わったので事務所にきていた。
翼は仕事に直接行くので、一人で。
ガムを噛み、ぷくーとかいって膨らませながら
事務所に入った途端、社長に手招きされた。
え、何だろう!と喜んだのはやはり浅はかでした。
「あら・・・ちゃん、は?」
相変わらずお美しい社長は、黒い微笑をに向けた。
元モデルの西園寺社長は、本性を知らない人にはとても綺麗な人に見えるだろう。
知らない方が幸せ、とはよくいったものだ。
「・・・えっ、あっ、そのっ、」
ヒィ・・・!とは血の気が引く。
柾輝から貰ったキシリトールガムの味が薄く感じた。
「今すぐ、呼んできてちょうだい」
にっこり。
は言葉も出ず、急いで事務所を飛び出した。
向かうは着替えられる場所。
よく考えれば、としてデビューしたってことは
事務所にもとして行かなきゃいけなかったわけで。
冷や汗をかきつつはわずか2分で着替えを済ませ、
再び事務所に向かって走り出していた。
*
バン!と元気にドアを開ける。
力を入れすぎて壊すと後が本当に恐いので慎重にしましょう。
「あら、。早かったわね」
「こ、んにちは・・・社、長・・・」
ゼーハーと肩で息をする勢いだ。
事務所の他の人達は社長の言った、早かったわね、の深い意味は知らない。
バレたら最後、というか命の最後?
息を整えて、は社長のデスクの前に立った。
うふ、と笑っている社長がとても恐かった。
「あ、そうそう。デビューおめでとう」
「ありがとうございます・・・」
「私も勿論見たけど・・・結構よかったわね、嬉しいわ」
上々のデビューとなった・・・じゃない、だが
それでも雑誌一つ。一つだけの契約だ。
ツバサのペアとしてはまだまだ、というアンチが出ていることを
は知っていた。
特に、男のツバサファンから。
まぁ、でも他の誰でも同じようなことになるので気にはしていなかった。
実力と実績が無いのは、本当のことだ。
「言い顔つきになったんじゃないかしら」
「そう、ですか?」
「えぇ。でも本当にお兄さんに似てるわねぇ」
「・・・・・・・」
「あら、触れられたくないところよね。ごめんなさい」
絶対わざとだ。
わかっているけれど、恐いので黙るだけにする。
「大丈夫よ、誰からも電話は着てないわ」
「・・・・・よかった」
「じゃあ、安心したところで、はいこれ」
パサ、と社長はデスクの上に、に向かって書類を見せる。
ワープロのその書類には疑問符を浮かべる。
話が全く繋がってませんよ、社長。
マイペースというか我が道を行くところは血なのだろうか。
「対談のお仕事よ、よかったわね」
「い、対談って・・・バレ、」
「大丈夫よね?はい、いってらっしゃい」
「・・・・・・っ今からですか?」
「ごめんなさいね、忘れてたの」
ゴーイングマイウェイな彼女は素晴らしいと思います。
ツバサの話は本当なんだなぁと妙に納得してしまう。
「今の調子なら平気だろうから頑張ってね」
その言葉と同時に、または事務所から出された。
凄く急な仕事です。
今から、といって只今2:30です。そしてこの仕事は3時から。
嘘だろ、と文句の一つでも言いたいところだが
何より恐いし、オーディションばかりで仕事がなかったにとっては
とても嬉しいことだった。
仕事の場所は電車で一本のところにあった。
行ったことがあるとこだったので、すんなりといけた。
書かれた地図によると、ここらへんなんだけど・・・。
あまり歩きたくないところなので、さっさと中に入ってしまいたかった。
「・・・・どこ、これ」
街は変わっていて、書かれている場所がよくわからなかった。
というかここらへんに事務所なんかあったっけ?
が首をかしげていると
「あの・・・さんですね?」
「え、あ、そうですけど・・・」
「今回は“Hoop”の雑誌対談を引き受けていただき、ありがとうございます」
スーツを着た男の人が話しかけてきた。
どうやら仕事の人らしい。
「私は企画担当の者です。ご案内いたしますね」
「よろしくお願いします」
物腰も柔らかい人だったので、怪しくないかも確認して
はその人について歩いて行った。
すると目の前にある喫茶店の奥に通された。
「え・・・あの、どこへ行くんですか?」
「西園寺社長から聞いてませんか?今回はこの店の奥にある個室でやるんです」
「・・・・・へぇ」
「大丈夫ですよ、声は漏れないよう普通の席から遠いところです」
ここには何回か来たことがあった。
彼によると相手からのご指名というか、ここがいいというアドバイスらしい。
しかしこの店に個室があるとは知らなかった。
「それに、対談するのは私ではなく笠井君です」
「かさ、」
が言おうとしたと同時にその個室の前についてしまった。
言葉は打ち消された。
「着きました。どうぞ、入ってください」
促されるようには部屋の中に入った。
部屋の中はあまり普通と変わらず、とても綺麗で清潔感があった。
6人くらい座れそうな広い座席はカラオケを思わせた。
向かって右側に、誰か座っていた。
「こんにちは、笠井君。待ったかな」
「いいえ、今来たとこです」
笠井・・・。
は呆然と立ちすくむ。
気のせいかと思ったけれど、そうではなかった。
笠井、竹巳。正真正銘、彼だ。
知り合いだった、“”の。
「くん?メイクするからちょっと座ってください」
「あ・・・はい」
心臓が早鐘を打つのを、深呼吸で落ち着かせる。
落ち着け、落ち着け。
たとえ、が知り合いだったとしても
“”は初対面なんだ。
メイクをするのでオレンジの縁の伊達眼鏡をはずす。
雑誌の撮影と違って、とてもすばやかった。
そうだ、眼鏡を取ったら、私は
“”から“”になる。
「メイク終わりました」
どうやら衣装はそのままで良いらしい。
「よし、じゃあ二人には自由に話してもらおうかな」
「それって、」
「対談とは名ばかりかもしれないね。
幾つか笠井君に渡しておいた質問に答えてほしいな」
「インタビュー形式ってことですか?」
担当の人が笑う。
「載せられるのはそこの部分だけかもしれないんだ。
でもその後は時間の許す限り自由に話してくれていいよ」
写真で、雑誌で写る“”ではなく、
内面的な部分も問われるということ。
これは、度胸がいるんじゃないですか?
難なくやっているツバサを本当に尊敬した。