がギンを見なくなってからもう二日は経つ。

   万々歳なんだけど、少し不安だ。
  

   そんな頃、三番隊舎は

   平和なようなそうでないような状況になっていた。
  




   「もう厭やァ・・・」
  
   「仕事終わるまで外には出しません!」

   「もう二日やで、いい加減えぇやん・・・」

   「今日もう一日我慢すれば、ここにある書類は終わるんですから」
   
   「拷問やァ・・・殺生な!」

   



   ギンは書類の山になっている机に突っ伏した。

   隣にはイヅル。終わった書類をまとめ、高さ15cmほどになる

   未消化の書類を机の上にのせた。

   そう、二日前に上機嫌で此処にきて以来、一歩も外に出ていない。

   我慢も限界だ。にあってないことがギンにとってどれほど辛いか・・・。



   「あァ、・・・」

   「普段、仕事放ってどこかに行くからこうなるんです」
  
   

   まったく、と溜め息をつくイヅルの言葉は流すとして。





   !!


  
   項垂れていたギンはガバリと起き上がる。

   や!

   間違えるはずなどない、この霊圧だけは。

   生気を失いつつある顔が途端に元気になる。

   逢える。逢ってやる。

   飢えとるんやで、ボクは。


   
 
   「・・・・・逃げようとしても、無駄ですよ」




   そういって薄く微笑むイヅルは少し病んでいるように見えた。

   
   逃亡、失敗。


   走行している間にもの霊圧はどんどん遠ざかっていった。

















      正義の味方は喧嘩っ早い




















   は今日も上機嫌だった。

   だって、市丸隊長に会わないんだよ?最高。

   昨日は珍しく器物破損の修理費請求書が来なかったし。
 
   仕事が来ないから思いっきり暇で、デスクワークを楽しんだ。


   そして、今から行くのは四番隊。

   花太郎に久しぶりに会えるのだ。あァ、可愛い花太郎・・・。




   「おっ、そこにいるのは花太郎じゃない。元気ー?」

   「あ、さん!お久しぶりです」

   「相変わらず幸薄そうだわ・・・心配」

   「?あぁッ、そうなんですっ、大変なんですよ!」

   「うえ?」





   四番隊綜合救護詰所にいるだろうとよったところ、

   ちょうど花太郎を見つけた。

   久しぶりに話すけど全然変わってないなぁ・・・。

   
   何か焦っている様子だが、花太郎が焦っても全然緊急事態に見えない。





   「一体、」



   
   が聞き返そうとした言葉はがっしゃーん!という

   何かが割れる音でかき消された。

   同時に小さな悲鳴と怒鳴り声。




   「じゅ、十一番隊の人が・・・!」

   「この間の怪我人?・・・大体想像つくけど」

   「暴れてるんですよ!今日は隊長も副隊長もいないし、みんな困って・・・」

  


   ブツン。



   何かが切れた音がした。


   花太郎がそれに気付いた頃には、もうは暴れている奴らのところにいた。

   白い肌にピクピクと動く青筋が目立った。

   完璧、怒ってます。




   「てめぇらなにやっとんじゃゴラァ!!」

   「あ゛ァ?」

   「あれほど四番隊に迷惑かけんじゃねぇって言っただろうが!

    ただの穴なのかその耳は!飾りならいつでも削いでやるよ!」




   女とは思えない迫力。

   いつもと性格が変わっているような話し方。
  
   いや、こっちが地かもしれないけどさ。

   暴れている十一番隊員はやはり下っ端の雑魚で、はそいつらの

   懐に入り下から睨みつける。

   こういう奴らは一番偉そうなのを殺ればいい。



   四番隊はびくびくと遠くからその様子を見守った。   




   「お前は関係ねぇだろうが!ひっこんでろ!」

   「あるに決まってんじゃないか、お前らが壊した物の修理費の決算

    誰がやってるとおもっとるんじゃ!あ゛?」
 
   「そんなこと俺らが知るかってんだ!」

   「弱いものに手ぇ出すのは最低な奴がやることだ。

    十一番隊、更木隊の奴らがやることじゃねぇんだよ!」

   「女がわかったような口きいてんじゃねぇ!」

   「ひっこんでろ!」




   戦闘部隊の十一番隊には、誇りも何も持たないカスが

   たまに混じって入隊してくることがある。
  
   お前らのその態度が、私の尊敬する剣八さんの顔に泥を塗るんだ。
 
   それだけは、許せない。


   の抑えていた霊圧が、怒りで一気に膨れ上がる。

   それでもまだ押さえているのだがびりびりという強い霊圧に

   確実に黒さが混ざっていた。
 
   あぁ、私デスクワーク派なんだけどなぁ。

   


   「・・・その反抗的な態度、後悔することになるのもわからないのか?」

   「は!何だよ、やるっていうのか?」

   「そっちが大丈夫ならね。上等、文句は喧嘩できこうじゃないか!」

   
  
  
   一瞬、ばっとお互い離れた。

   十一番隊員が刀を抜こうと柄に手を伸ばす。

   だが、それは叶わなかった。


 
   ひやりと、首に冷たい感触。





   「・・・・・自分の身の程を知りな」


   


   先ほどまで見えていたはずのはその場所にはおらず、

   冷ややかな表情で刀を押し付けていた。

   

   ほんの、一瞬の出来事。 



   押し付けられた方はの殺気にやっと気付いたようで

   かくん、と地面にへたり込んだ。


   他の奴らもただ呆然と立ちすくむだけだ。

   弱いものに手ぇ出すような奴は、大体、縦社会なんだ。

   もう手出しはしないだろう。

   やめてくれ、という微かな声が聞こえた。




   すると、四番隊員から盛大な拍手が送られた。

   


   は刀を鞘に戻す。

   花太郎が駆け寄ってくる。



   「さん、やっぱ凄いです!」

   「いやいやぁ、別に何もしてないって」

  

   ありがとう!という声が響く。

   みんな笑顔に戻ったようだ。よかった。


   さすがさん、というギャラリーの声に

   へたり込んだ十一番隊員は顔色を蒼くした。

   血の気がサアっと引いたようだ。




   「、ってあのかっ?」

   「殺意の化身、見たら虚も逃げ出すって言う・・・!?」    

   


   いやいや、逃げださないって。

   そしたら仕事なくなっちゃうじゃんかよ。

   


   「まぁ、十一番隊のって言ったら私だけど。何か?」

      


   にっこりと微笑む

   奴らもどうやらの昔の事を知っているようだった。  
      
   というか、知らない奴の方が珍しいのだが。 
  

    


   「これからは稽古で鬱憤晴らそうや。いつでも相手になるからさ」





   そういうとは、花太郎を連れて四番隊舎の奥の方に去っていった。

   お菓子ありますよ、という花太郎の呑気な声が

   平和さを物語っていた。





   「・・・・・・・さん、やっぱ素敵・・・」





   通りがかりの雛森の目がキラキラと輝いていたのに

   隣に立っていた乱菊は溜め息をついた。



   もちろん、この件でのファンが増えたことは言うまでもない。
  
  











  
   オマケの三番隊というと。

 



   「ど、どうやイヅル・・・終わったで・・・!」

   「お疲れ様です、隊長」

   「さァ、ここから出してもらおうやないの」

   「・・・・残念ですが、まだこんなに書類が」

   「何でや!終わったやん・・・!」

   「隊長が終わらせたのは昨日までの書類です。これは、今日の」

   「・・・・・・・・んな、殺生なァ!」


   

   市丸隊長の貼り付け状態は、当分続きそうだ。    

  



   「・・・!」





   愛しい彼女を呼ぶ声も、イヅル以外の誰にも届くことはなかった。

   今頃は呑気に十一番隊舎で寝ていることだろう。

   ギンが必死に仕事をしている間、イヅルがにあっているのは秘密である。