四番隊に絡んだ奴らに制裁したら
お礼です、ってお茶菓子たくさんいただいちゃった。やった。
幸せ気分はやっぱお裾分けしないとね。
今日も修理代の請求3件だけだったし!
お邪魔しまーす
十一番隊にくる書類なんて、虚の特徴が書いてあるものとか
今度こんな奴らが入隊希望しています、みたいなものが数点。
ほとんどは、毎日必ず誰かが壊すものへの修理費請求だ。
それにくっついてくるのが誰がどこでやったかなんかの説明。
「というわけで、一角の給料から引かせてもらうからよろしく」
「はぁっ!?」
「書類きてるし、しょうがないじゃん?斑目第三席殿って」
今日はたまたま一角。
一番多いのは剣八さんだと思う。ちょっと霊圧出すだけでボロボロだしね。
しょうがないことなので、誰も何も言わないのだ。
一角の給料から、とメモを残して書類をまとめると
は立ち上がる。
四番隊の人から貰ったお茶菓子を持って、にっこりと笑った。
「じゃあ、私は出かけるから!稽古は良いけど物は壊さないでよ!」
隊舎にいた全員にそういうと、は足取りも軽やかに
十一番隊者を出て行った。
ちなみに、への修理費請求は両手で数えるほど位しかきたことがない。
もちろん一年にだ。・・・多いのか少ないのが微妙なところ。
今日も天気が良い。
こういう日は外をうろうろしていたいけど、市丸隊長もきっと
同じことを思うだろうからやめておこう。
今日はなんだか、頭を使いたい気分だ。
「乱菊いるー?」
「あぁ、。こっちこっち」
十番隊の執務室に入ると乱菊がソファーに凭れて
お茶を飲んでいた。
ヒラヒラと振られた手は、少し疲れていた。
それもそのはず。
乱菊の目の前には結構な量の書類。
終わらせたものと未だなものが大体同じくらいあった。
なるほどね、とは笑うと乱菊の隣に座った。
「凄い書類・・・お疲れ、乱菊」
「でもまだ終わってないのよぉ」
「・・・・手伝うよ、暇だしね」
いつものようにがそういうと
ありがと!と乱菊は抱きついてきた。
魂葬とか虚退治とかそういう仕事はには回ってこない。
というよりも今はデスクワークの方が好きなので
戦闘の仕事しか来ない十一番隊では暇をもてあましている。
なのでいつも十番隊の仕事を手伝っているのだ。
もちろん、乱菊と遊ぶためでもあるが。
めんどうな書類の雑務を手伝ってもらえるので、乱菊は小躍り気分。
二人とも利益が有るので、一石二鳥というか。
とりあえず、片付けばいいんだ。きっと。
「あー、そういえば」
「何?」
「この間、四番隊で何かやったでしょ」
乱菊は手を動かしながら、話しかけてくる。
「うん、やった。久しぶりだったな」
「雛森が目をキラキラさせて見てたわよ。ったく」
「でも抜刀したから剣八さんに怒られちゃった」
あの事件以来、実戦から逃げている。
いや、逃げているというか・・・なんだろう。
おいといて。
実戦に出ないくせに刀を抜くのはどうやら剣八は許せないらしく
刀を抜くなら戦え、戦わないのなら刀を抜くな!
そう、言われている。
ちなみにこの頃、稽古とか一角と試合とかしているので
にはちょっとした罰もあった。
・・・・あぁ、辛かったなぁ。汚いんだよ、うちの隊舎・・・!
つまりは、掃除。
「?おーい」
「・・・・・あぁ、油虫だけは出ないで欲しいなァ」
「何の話してるのよ、あんた」
乱菊が心配そうに見るけれど、はちょっとトリップ中。
「乱菊がこの間遠くへ行っているときもさァ、辛かった」
「・・・・・・へぇ」
「稽古はいいんだけど、汗も血も飛ぶから木刀に血が滲みこんじゃって」
「・・・・・・ほぅ」
「いつ肉塊が飛び散るんじゃないかって物陰から涅隊長が覗いてるし」
「・・・・・・はぁ」
「いつの間にか恋次巻き込んだから、朽木隊長が静かに怒っててさぁ」
「・・・・・・へぇ」
「恋次の代わりに私が仕事するはめになって・・・肩こったなぁ」
「・・・・・・ほぅ」
「厭だったけど、市丸隊長来なかったら、私やつれてたと思うよ・・・」
遠くを見るようなまなざしの。
もう乱菊はの話を流して、適当に相槌を打っている。
トリップしながらでも、の手も乱菊の手も決して休まることはない。
乱菊より少し速めのペースで終わるの書類をみて
もったいないなァ、といつも思う。
これだけできるならどの隊も欲しがるだろうに。
「あ、そうだ乱菊」
「何?」
「この頃さァ、市丸隊長見ないよね」
「そういえばそうね。・・・で?」
「すっごい開放感!」
「・・・・・・・・」
は両手を広げて喜ぶ。
同時にのところにある書類は、あと二・三枚だったのに気付く。
「そういえば、吉良が大量の書類を抱えてたわね・・・」
「イヅル・・・なんて可哀相なの、私がいたら持ってあげたのに・・・!」
「・・・・もういいわ」
乱菊が溜め息をつく。
「でもいいなァ、十番隊はこんなにやることあって」
「・・・やることあると逃げ出すくせに」
「逃げないって。楽しいじゃん、雑務」
「代わってあげたいけど、十一番隊はねぇ・・・」
何だって?とは乱菊を睨む。
でも、乱菊の意見は普通だ。女で十一番隊にいるが異例なのだから。
あんなガラの悪い筋肉部隊、というのが偏見。
別に理解してもらおうとは思ってないのだが。
「そんなこといってる間に・・・終わったァ!」
「えっ、嘘」
書類をバン!と叩くとは寝転がった。
乱菊が覗くと見事に処理済の書類。
ちなみに乱菊の書類はもう少し残っている。
が。
乱菊は立ち上がるとの分のお茶も入れた。
緑茶のいい香りがした。
は思い出したように、四番隊から貰ったお茶菓子を出した。
お裾分け、とは笑った。
一口入れたそのお菓子は、とても甘かった。
お茶菓子食べて、お茶飲んで。
不思議と乱菊とは会話が尽きない。
熱くて飲めなかったお茶が、温くなってしまうほどに。
「あ、そうだ。ほらこれ、お土産」
「ありがと!ごめんね、貰ってばかりで」
「なぁに言ってるの。今日くれたじゃない」
ね?と微笑まれて、はそれ以上何も言えなかった。
ので、さっそく頂いたお土産の包みを開いた。
「・・・・・・髪紐・・・?」
「そう、いつもおろしてるから」
「かんざしでもよかったんじゃないの・・・?」
「そういう小間物は男からもらうものなのよ!」
いやいや、そんなものくれる人いませんって。
・・・・頭に浮かんだ思い当たる人物の笑みを思い出し、身震い。
だいいち、私・・・結わないよ、髪。
というより、は髪を結えるほど器用ではない。
髪紐、というと恋次が思い浮かぶのは何故だろうなぁ。
「たまにはいいじゃない」
「でも、」
「結えないのは百も承知。ほらあっち向いて、やってあげる」
声と同時には反対向きに向かされて、
肩ほどまで伸びた髪は乱菊のキレイな指で持ち上げられる。
硬そうに見えて意外に柔らかい髪は
すっと手櫛で梳かれていく。
そのたびに香るかすかな匂いに乱菊は微笑む。
「髪、意外に柔らかいわねぇ。いい香り。何かつけてる?」
「そう?別に何もしてないけど」
「死覇装からもいい香りがするし・・・男、できたの?」
「できません!きっと色んなところいくから、匂いが移るんじゃないの」
「そういわれると、お香っぽいわね」
落ち着くいい香り、と乱菊は笑った。
は自分の着物を嗅ぎ、よくわからないや、と疑問符を浮かべた。
髪を結っている途中なので首は傾げない。
「はいできた!」
の書類仕事のように、乱菊もこういうことは早い。
高めの位置に結われた自分の髪を横目で確認する。
はい鏡、と乱菊に手渡され、まじまじと見てしまった。
印象が違う、というか・・・。
正直、自分には合ってないような気がする。
なんか女って感じがして。
角度を変えてみるとみえる自分のうなじは白くて、
女のうなじは色っぽいと聞くのを思い出す。
自分のはあまりそうは感じないが。
「松本、仕事は終わったのか?」
じーっと鏡を見つめるとそれを見つめる乱菊。
がちゃり、と扉が開き、二人ははっとそちらを向く。
そこにはどうやら書類を終わらせて、帰ってきた日番谷。
がいることに気付き、書類ではなくそちらを向く。
が、その目が一瞬見開いて、少し反応が遅かった気がした。
「なんだ、またきてたのかお前」
「お帰りなさい、日番谷隊長」
「・・・・・・隊長はやめろっていっただろうが」
日番谷はの正面に立ち、書類ととを交互に見た。
またこいつがやったのか・・・とでも思っているのだろう。
「ねぇ、これどう?」
は自分の髪を指差して尋ねる。
日番谷は言葉に詰まって、一瞬固まったように見えた。
目をぱちくりとさせ、あー・・・とか
少し興味無さ気にを見て、口元を押さえた。
「・・・・・馬子にも、みたいな奴だな」
そういった日番谷の頬が、少し赤く見えたのは乱菊だけだろうか。
あえて何も言わない乱菊は心の中で小さく息を吐いた。
対してそういわれたはそっかぁ・・・といったかと思うと
結ったばかりのその髪紐を豪快にとってしまった。
「じゃあ、とる」
「あっ、勿体無い・・・」
「いいじゃん、また今度乱菊がやってくれたら・・・ね」
じゃあ長居したし、とは立ち上がり
日番谷に軽く会釈すると走って帰っていった。
ばたん、という扉が閉まる音が乱菊と日番谷の間に大きく響いた。
「・・・・・・・隊長の、アホ」
ボツリと呟いた乱菊に日番谷はうるせぇ!と怒鳴ると
くるっと反対方向を向き自席に座った。
その顔がどうしようもないような葛藤をしているのに
気付いた乱菊は声を出して笑った。
素直じゃないの、と呟く真意はもちろんには届くはず無く。
滅多に見ない、の髪を結った姿が瞼に張り付いて消えなかった。
あの姿に似合うかんざしは、一体どういうものだろうか。