今日もいい天気ー。
ちょうど仕事もひと段落したとこだし、ちょっと休憩しようかな。
あ、この木陰とかすごい日当たりもいいし寝心地よさそ・・・ぐぅ。
眠り姫
ちくしょう、どうしてこう仕事が終わらねぇんだ・・・!
明らかにサボりまくっている副隊長のせいなのだが、いくら怒鳴ろうが
受け流されてしまうだけに結局自分の仕事が増えるばかりだ。
ふと鼻先を蝶々がかすめるように飛んでいく。
その行方に視線をやると、寝ているをみつけた。
木陰で、人通りもないこの道をよくみつけたものだ。
周囲に人は全くおらず、静寂が満ちていた。
そばに近寄ると、どうやら熟睡しているようで、規則的な寝息がきこえる。
寝ている間は、本当に人形のようだ。
そしてふと、先日のことを思い出す。
話すたび揺れる豊かな髪。普段見えない細く白い首。後れ毛のかかるうなじ。
・・・顔が熱くなったのは、気のせいだと思いたい。
「きれいな髪だな・・・」
さら、との髪を梳く。
思ったよりもやわらかい感触と微かな香の匂いが普段全くしない
女を感じさせた。
「この前は、悪かった」
松本が結った髪。まさかあんなにも色気が出るとは。
似合いすぎていて、何も言葉が出なかった。
「・・・なんて、言えるわけねぇじゃねーかよ」
なんの気兼ねなく褒め言葉が口に出る奴らが少し羨ましいとさえ
思ってしまった。俺には到底できない。
先ほど飛んでいた蝶々がの髪にとまり、日番谷は微笑を深めた。
・・・あぁ、こいつには蝶が似合うな。
当然人前や、本人が起きていたらいえるわけがない。
だが今は誰もいない。
「お前はきれいだよ」
だからだろう、思っていたことがすんなり口に出た。
だからだろう、思わず身体が動いていた。
柔らかい頬は、思っていたよりも弾力があって感触がよかった。
いくら触れていてもきっと飽きないほどに。
離したばかりの唇を、もう一度と思ってしまうほどに。
「・・・いけまへんなァ」
ぎくり、と身体が硬直する。
さっきまで、何の気配も、霊力も感じなかったというのに。
この、声は。
「ボクのやて、いうとるのになァ」
からみつくような声音。
振り返ると、市丸が自分のすぐ後ろに立っていた。
その瞳はとても冷ややかで。そういえば、こいつがを気に入ってるっていうのは
瀞霊廷の中でも有名だ。
「・・・知るか」
バツが悪くて、いつも以上にぶっきらぼうな口調になる。
むしろなぜこいつの所有権を市丸に主張されなければならないのか。
少し、腹が立った。
すると市丸はふっと笑んで、へと手を伸ばした。
「こんなに脆くて、強くて、壊れやすい子」
なんて綺麗なんやろなぁ。
「・・・ホンマ、殺したいくらい」
愛をささやくような声音で紡がれる、殺意。
頬をなでる指が今にもの首を絞め殺しそうに思えた。
「市丸!」
「おや、コワイ顔」
「お前、そんな」
そんな感情で彼女を欲していると、彼女に触れているというのか。
明らかに心に傷を残して、・・・いや最初から触れられたくないほどの秘密を
持ち続けているに。
日番谷の言いたいことがわかったらしい市丸は、笑みを深める。
口元はとても愉しげだった。
「隊長さんと一緒やで」
ボクの愛は、殺意と紙一重やもん。
の頬を撫でる市丸。
しかし一瞬でぶわ、と増した殺気にが飛び起きた。
「市丸隊長!?」
ズササササ、と音を立てて後退したに、何事もなかったかのように
市丸はおはようさんと笑った。
「昼寝もえぇけど、こんなとこで寝てたら、襲われてまうで?」
なァ、と日番谷に一瞬視線を向けてそういうと、市丸は笑みだけを
残して去って行った。吉良の気配が傍でしたので、どうやら逃げたようだ。
その場に残された日番谷とは、ただ呆然とそれを見送った。
「・・・何、今の、どういう意味?」
きょとんとしたままはただ呟いた。
確かに寝ていたが、頬には感触が残っている。
感じたのは市丸の殺気。でも起きて目の前にいるのは市丸と日番谷。
・・・ちょっと気まずそうなのは、なぜだろうか。
「ねぇ、日番谷君。どーいうこと?」
「・・・・・・・」
「え、ちょっと、寝てたら、なんて・・・ないよね!?ねぇ!?」
市丸隊長にされてたら、私もう死ぬ!
問い詰められた日番谷が答えられるはずもなく。
はただただ詰め寄って、視線を逸らす日番谷の裾を掴んで叫び続けるだけだった。
(答えられるか、莫迦!)