重い。何で「今晩は焼きなすよー」とかルンルンでいってたくせに
   よりによって醤油買い忘れるのかなあの人は・・・!

   右手にずしりとくる醤油のボトルとお駄賃で好きなの買っていいから
   とかいって(小学生かあたしは!)渡されたお金で買った
   でっかいアイスを自転車のかごに載せて、は駅前の商店街から
   家へと帰る途中だった。
   
   
   
   「あ、

   「・・・平馬」


 
   買い物ラッシュは過ぎたためそこまで混んでいない商店街で
   ジャージ姿でエナメルバッグをかけてのろのろと歩く平馬に、声をかけられた。
   ・・・逢いたく、なかったのに。


   「買い物?」

   「まぁ、ね」

   「うわ、そのアイスめちゃうまいやつじゃんかー」

   「あげないからね」


   けち、と平馬が口を尖らせる。
   
   今日は学校で平馬にノート勝手にパクられてたせいで先生にめっちゃ怒られるし
   昼ごはんのあたしのデザートとっちゃうし、今度オフできたからって平馬の家で
   映画見ようって自分で誘ってきたくせに何観るか決めてたら途中であ、とか
   言い出したかと思うとやばいその日ケースケ来るんだったとかいって駄目になって
   じゃあ外でちゃえばいいじゃん、っていつもならいうくせに暑いから外行きたくない
   とかいって結局なしになっちゃって・・・。

   今日はさすがに平馬にイラッときていたのだ。


   「はこれから、直帰?」
     
   「当たり前でしょ。平馬は、駅行くの?」

   「そう。急に合同練習になって、これからいくとこ」

   
  
   合同だとケースケいるから嫌なんだよなー暑苦しいし、とぶつぶつ文句を
   漏らす平馬に、自分で聞いたくせにへぇ、とだけ返す。
 
   あぁ、嫌な女。それでもやっぱ学校でのことが蘇ってきて
   はブスッとしてしまう。
   本当なら、偶然でも会えたことが嬉しくてたまらないはずなのに。

   いつもなら「ぶつぶつ言ってないで早く行ってこい」とか
   なんだかんだでアイス一口くらいはくれるのに、そうではない
   平馬はむーと視線をあてる。




   「・・・お前、どうした?具合でも悪いわけ?」

 


   ツッコミのキレがないぞ、そんなだとボケ垂れ流しで大変じゃんかー。

   せっかく気遣ってくれてるもわかるし、珍しく平馬が人の変化を悟ったというのに
   その言葉にますますは苛立ってしまい、ぶっきらぼうに答えた。



   「別に・・・」 
 
    

   自転車にまたがったまま、視線を逸らす。
   あぁ、可愛くないなぁあたし。でも怒ってるんだもん、やっぱ・・・。

   すると、急に視界が陰ったと思うと、唇が触れた。

      

   「っ」



   くしゃくしゃ、と乱暴に頭を撫でられ、は真っ赤になった顔を上げる。
      




   「行ってきまーす」




 
   平馬は楽しそうに笑って、に背を向けたまま
   ひらひらと手を振りながら駅へ向かって歩いていった。

   周囲の視線が痛くて、は更に顔を赤らめた。
   普段そんなことするヤツじゃないのに・・・!

   びっくりとドキドキで、心臓は忙しいし、顔は熱いままだ。




   





  一瞬のうちに









   イラッとしてたことも、忘れちゃったよ、ばか平馬。