試合後。
   控え室そばのベンチで、は彼が来るのを待っていた。
   スポーツタオルを頭にかけて、やってきたのをみて
   は立ち上がって迎える。



   「お疲れ、平馬」

   「おー」


 
   差し入れを渡しながら、はそそくさとベンチに座る
   平馬をみて笑った。



   「平馬って走るんだね。すっごい意外」
 
   「そりゃ普段省エネな俺だって、やるときはやる」


   
   走らないと始まらないけれど。
   普段の彼を知っている人間からすれば、なにより平馬が走っている
   ということ自体がびっくりなのだ。



   「普段が節約しすぎてて・・・ねぇ?」

   「失礼なやつだなー、お前」

   「まぁまぁ。おめでと。ナイスアシスト!」

   「どーもどーも」



   2アシスト。自分の仕事ができたし、手ごたえもあった。
   


   「もう一試合あるんだよね?」

   「・・・あー、そうだった」

   「おいおい」

   「もう無理。交代」




   ぐだ、と平馬は隣に座ったに倒れるように体重を預けてくる。
   重いが押し返すことはせず、軽く頭を叩いた。
   
 


   「こら。人がせっかく応援来てんのに」

   「HP足りない」

   「次、準々決勝でしょうが」
 


   ここまでくると強豪しか残っていない。
   しかも次の相手は優勝候補を破ったダークホースだときいた。
   平馬がいなくては、勝てるものも勝てない。
   ・・・なにより平馬のプレーがみたいから、わざわざここにきているのだ。
  
   どうそれを伝えようか、とが思案をめぐらせていると
   平馬が身体の向きを変えて、更に距離を近づけてきた。

   主に、顔の。
  
  







   「・・・じゃあ何かちょーだい」






   


   は?と言葉を返す間もなく、後頭部に手が回り固定され、
   平馬は首を動かして唇を重ねてきた。

   角度を変えて、何度も、何度も。
   の息があがっても、平馬の胸板を押し返しても、唇は離れることはない。
   食むように、唇を撫でるように、緩急をつけた口付けは
   どんどん深くなっていく。
       


   な、長い・・・!



   羞恥と酸欠での顔は真っ赤に染まっている。
   1分以上続いただろうか、平馬が満足したように離れていった。
         



   「・・・・どーも。ごちそーさん」
 
   「・・・・・・・・っ!」


  

   何すんだ、ばか!
   思わず叫んだ言葉に、平馬は飄々とした態度で笑った。
  





   「勝利へのごほーび・・・・と、次へのエネルギー補給」






   じゃあ行ってくる。次もちゃんと観てろよなー。 
   ぽん、と頭に手を乗せて、平馬はのろのろと控え室へ戻っていった。


   気まずそうに出入りする千裕君や他の選手には大変申し訳ないが、
   次の試合が始まるギリギリまでスタンドに帰れなかったのはいうまでもない。