チキンにシチューにケーキ!
あとあとピザも頼んで、アイスも買って。
もうシャンパンも飲んでいいんだよね。なんて幸せな日なの!
予想外聖夜
・・・とか思ってたら。
「ちょ、ちょ、ちょっと!平馬、きいてよー!」
食堂で発見した友人に飛びついて、は叫んだ。
年内の授業も終わって、皆早々に帰るため人はまばらだ。
飛びついた友人は相変わらずやる気のかけらもない表情だけれど、
眉間に少しだけよった皺で厭そうなのはわかる。
ポテトこぼれたくらいで気にする奴じゃないので気にしないけど。
「何?」
「ケースケのやつ、か、か、カノジョできたんだって・・・!」
「・・・は?」
「あの裏切り者!ありえないだろうと思って誘ってたのにもう予約もしちゃってたのに!」
「あぁ・・・そういや言ってた気が」
「どんな物好きなのかと思ったら超絶可愛いの!しかもあの暑苦しさを受け流すの!」
ありえないありえない!
あの暑苦しくて見た目のプラス要素を全部打ち消すので有名なケースケが
ついにカノジョ持ちになるなんて!
ずっとぐだぐだとつるんでて、毎年クリスマスも今年こそ!とかいいながら
結局三人で過ごしてて。去年から私が一人暮らし始めたから、もうなんでもOKで
すっごく、すっごく楽しみにしてたっていうのに。
なのに!
「・・・ケースケにカノジョねぇ」
「ムカついたから財布からケーキとピザ代抜き取っておいた」
「よくやった」
「じゃなくて!やだよ寂しいよクリスマスなのに!」
「あ、ケースケいないと誰が料理すんだ」
「いや私も作ってるけど」
「うわ、不安」
「でしょ!って失礼な。ケーキも絶対私食べる前に平馬食べちゃうじゃん!」
「失礼だなー。ちゃんとお前の分もあげてるだろいつも」
「ケースケが止めなきゃ、私の分2割くらいじゃん!」
「まぁそうだな」
「納得しないでよ!やだよいつも一緒のくせに抜け駆けとか寂しいじゃんかぁ!」
ぎゃーぎゃー不満をたれていると、平馬はあぁ、とかなんかちょっと考え込んだ後、
ケロッとした顔でトレイにこぼれたポテトをもぐもぐと頬張りながら返す。
「別にいいだろ、飾り付けはやったし、ケースケいない方が自由」
「えぇー・・・だってなんかさぁ・・・」
もごもごと言いよどむ私。どうして平気なのかな、平馬は。
まぁもともとこういうの気にするタイプじゃないのは知ってるけどさ。
私は三人でいる関係がすごい気に入ってるし、友達も少ないから余計二人といる
空間が好きだし大切にしたいのに。
「!」
そこに同じゼミの男子が話しかけてくる。
ちょっと遠くにはその子の友達の男女。テストが終わって、これから帰るみたい。
何?と返すと、その子はちょっとだけ平馬に視線をやってから口を開く。
「25日空いてる?俺らでパーティするつもりなんだけど、もどうかなって」
「え・・・」
滅多にないお誘い。私がこういうのめんどくさがるのはちょっと話す程度の
友達でも知っているから、あまり誘われない。
それに大体がつまらない合コンで、楽しめなくて途中で帰っちゃうから。
そんな私を誘うってことは、なんか理由があるのかもしれない。
それか、ケースケにカノジョができたことがもう広まってて、私がうだうだ言ってるのとか
私がクリスマス暇になることを誰かが言い出したのかもしれない。
・・・どっちにしても、どうしよう。
ケースケに負けるのも悔しいしこれに便乗してカレシなるものを作ってみるのも
ありといえばありなのかもしれない。
めんどくさいといえばめんどくさいし、わかりきった雰囲気にのまれるのもちょっと癪だけど。
「ダメかな?・・・俺は、が来てくれると、嬉しいんだけど」
・・・どういう意味?
そう聞き返そうとする私の口に、乱暴にポテトがつっこまれる。
「ダメ。こいつは毎年俺と過ごすから」
平馬が自分もポテトをもぐもぐと頬張りながら、そっけなくいう。
もちろん私の口にポテトをつっこんだのもこいつで。
私は平馬が反対する意味が分からなくて、ちょっと、と目で訴えながら
平馬の肩を叩いた。
すると、平馬ははぁ・・・とため息をついて、私を見た。
「・・・お前、25日は何の日か知ってるか?」
「え、だから、クリスマス」
「と、俺の誕生日」
「ああ!」
いつも一緒くたにしてるから、忘れてた。
プレゼントも二個渡してるし。なんかそれが当たり前だったし。
平馬はゼミの男の子にひらひらと手を振って言う。
「つーわけで、こいつは25日は俺を祝うから無理」
他当たって、と私の手を掴んで、食堂の奥へと歩いていく。
私はちょっと状況が呑み込めないながらも、ごめんね!と叫んで平馬についていった。
「・・・なに、今の。私の予定はいつ決まったの。ケースケいないのに」
「ちょーどいいじゃん。ケースケいないなら、俺の誕生日祝いってことで」
「え、そのまま続行!?」
「当たり前だろ。誰が食いもんあるのわかってやめるか」
「え、でも」
「誘う手間省けた。いい加減はっきりさせるつもりだったし」
ポテトを飲み込んだ平馬は、そのまますっと距離を縮めて。
触れるだけのキスをした。
「!?」
私は頭が追い付かなくて、ただ目を見開いて平馬を見返す。
ふっと笑んだ平馬が、すごく愉しそうで、嬉しそうにみえて。
一気に顔に熱が集まる。
「ま、二人きりのクリスマスってのも悪くないだろ」
プレゼントは私、っていうのもありだからなー。
そういってのろのろと歩いていく平馬を、私はただ茫然と見送った。
え、ちょっと、どういう、意味・・・!?
むかつくことに、25日には雪が降って
神秘的でムード満点なホワイトクリスマスになりましたとさ。
・・・私の純潔?そんなこと聞かないでくださいほんとに。