じー。
居た堪れない、この視線。
「いい加減、勘弁してくれないかな」
ちらりと日生に抗議の眼をやる。
しかし、日生はにっこりといつもの笑顔を嬉しそうに浮かべるだけだ。
「やっとこっち向いた」
ハートマークでも付いていそうな声色に、呆れるしかない。
本当に満足そう。
「呼べばいいじゃない、用があるなら」
「んー?特に用は無いけど」
「・・・・・・恥ずかしいよ」
「前は、そっちがこうやって見てたんだぜ?もっと、可愛い顔で」
うっと言葉に詰まる。
忘れていたい事実に、恥ずかしさのあまり顔が赤くなる。
「ほっほら、今は授業中だし、さっ」
「自習中じゃん」
数十分くらい前に先生が出て行った教室は、凄く騒がしかった。
二人の会話も、聴こうと思わなければ聞こえない。
じー。
顔を背けようが、その視線は変わらない。
何をするのも緊張する為、机の上にある問題集は途中で放棄されていた。
「・・・用が無いなら、勉強しようよ」
「げ!そんな真面目なの、だけだって」
「だっ、だったら、友達のとこに行く、とか」
「やだ。せっかく隣の席になったんだし」
クジを取り替えたのは、友達との秘密だけどな。
墓まで持ってってくれよ!にバレないように、な。
「あ、用といえばさぁ」
「う、ん?」
「・・・駅前周辺の家から何から全部、飾り付けしてあるんだよな」
「あ、うん。高木さん家とか凄いよ、こってて、こう、蒼いのとかついてて」
「俺、クリスマスに雪って初めてなんだよなぁ」
「そうなんだ。ここじゃあ、絶対降るよ」
東京じゃあ、滅多に降らないらしいけど
ここではうんざりするくらい毎年降る。感動もあったもんじゃない。
そんな冬がすきなのだけれど。
「ってことで、その日夜空けといて!」
「え?」
「案内ないと俺迷うから。綺麗なの観たいし、雪も味わいたいし」
「えっ、ちょっ、決定なのっ?」
「モチロン!その日俺が迎えに行くから、防寒しとけよ」
「わ、私行かないよっ、寒いし、」
「拒否権なんてその赤い顔じゃありませーん」
がた、と音を立てて、日生は一番後ろのこの席から
一番前の友達のところに歩いて行ってしまった。
残されたは、熱った顔を両手で押さえ、呆然とするだけ。
「ちょっ、それって、クリスマスの、・・・!」
それって、ほら、あれだよね。
色気とか云々より、その日に二人で出かけるの・・・?
口にすら出せないその言葉。
「その日俺、一歩前進するつもりだから、そっちの準備もしとけよな!」
振り向いて笑った日生に、の顔はさらに紅潮する。
・・・と、とりあえず、プレゼントどうしよう・・・・・!
その日を機会に
あわよくば、気持ちが伝わればいい。
日生は堪えきれない緩んだ笑顔で
「・・・っやばい、可愛すぎるって・・・・・・!」
と友人に漏らしていた。
どうやらスイッチは、本格的にオンになった模様。