クラスでのクリスマス会。
   前日からの大雪で外出どころか玄関まで埋まってしまったため
   中止となったそれ。
   当然消化不良のまま終われる筈もなく、リベンジしよう!と
   いうことになった。発案者はもちろん、クラスの人気者。

   

   「プレゼント余ってても仕方ないしなー!」
   「じゃあ、クラス替え前にパァーっとやろうぜ」
   「独り身でさみしー奴限定で集まろ!」
   「お前決定じゃん!」
   「うっせ!」



   ゲラゲラと中心で笑いながら、日生が女子にも声をかける。 
   


   「ってことで、集合な!」



  
  
   
   





  遅れてきた奇跡










   そんな感じで集まったのがクラスの半分。
   三年になったらクラス替えもあるし、本格的に受験シーズンになってしまって
   こんな風に集まることもできなくなる。本当に仲が良くてノリもいいクラスだったから
   こういうのは多かったため、ある意味遊び納めの意味もあった。
   
   もしかしたら片想いの相手と、という淡い期待をもった友人に引きずられるように
   も参加していた。クラス替えで分かれてしまったら毎日教室で顔をあわせることも
   なくなるから、友人の気持ちもわからなくもない。 
   
   飲んで、食べて、騒いで、歌って。
   あっという間に時間は過ぎていく。楽しい雰囲気と熱気に室内は包まれていた。
   その雰囲気にのまれて、外の雪に背中を押されて、何人か部屋を
   抜け出している人もいた。
   
   ・・・そうか、クラス会っていうのはこういうのもアリなんだ。 
   なんでクリスマス終わったのにやるんだろうと思っていたけれど、納得。
   降雪が続いて外出も難しかったのもあり、クリスマスの飾りは
   大して片されずにいるので、雰囲気は正月を過ぎても消えていないのだ。
   
   ジュースを持って窓の傍へと移動し、腰を下ろしたは横目でこっそり
   部屋から出て行く友人を見送った。
   どうやら彼女にも奇跡は起きたらしい。
   うらやましいな、と思ったら笑みが浮かんだ。よかったね。

   部屋の中心の騒ぎからはずれているので声は少し遠いが、それでも楽しい雰囲気は
   のところまで届いた。心地よかった。

   

   「
   「ん?」


  
   振り向くと、日生が笑ってそばに立っていた。  
   


   「疲れた?」  
   「ううん。楽しいね」   
   「そっか、よかったー。端にいるからさ」

   

   ジュースのおかわりを手渡してくれた日生は、そのままの隣に座る。
   いつも中心にいる彼がきたので、少しドキッとする。
   いいのだろうか、こんな端にいて。



   「も独りだったんだな。意外」
   「それ、こっちの台詞だよ」


   
   嘘だ。私は日生に彼女がいないことなんて、知っていた。
   ずっと、知っていたし、願っていた。

   

   「プレゼント、何持ってきたの?」
   「無難に帽子。あったかいかな、って思って」

   

   似合わなかったら申し訳ないけどね、と笑う。
   
   だってあれは、誰かのために選んでしまったから。
   もしかしたら、なんて下心が入ったプレゼント。
   クリスマスの日に大雪が降ったときは罰なんだと思ったけど。

   

   「日生は?」
   「俺は、」
   「プレゼント交換するぞー!!」

   

   日生の言葉を奪うように、中心で男子が大声を張り上げた。 
   ばたばたと皆、プレゼントがおいてある部屋の中心へと集まる。
   二人もそれぞれの友人に引きずられるように、その輪に入った。 

   






   *








   「じゃあねー!」
   「また明日な!」



   なんて口々に言って、クラス会は解散した。
   外に出ると一気に寒くて、はバッグから手袋を取り出した。
   
   その際にみえた袋に、ため息が出た。
  
  

   まさか。


 
   まさか、自分のがまた手元に戻ってくるなんて。
   最悪すぎる。本当、ありえない。
   妙なテンションでプレゼントをあけて喜ぶ中、そんなこと口に出せず
   出したとしても爆笑されるだけだったので、そのまま持っていたのだ。
   
   なんだか下心があった分、恥ずかしい。

   もうこれは期待するなということなのか。神からのお告げだということか。
   仕方ないから帰って兄にでもあげようかな、とまたため息をついて歩き出した。

   の家の方向に女子はいなかった。行きに一緒だった友人は
   めでたくカップルになったようで、幸せそうに笑って去って行った。
   これから彼氏と遊ぶのだろう。この分だと初詣の約束もなしになりそうだ。

   


   「あ、!待って、俺もそっち」


 
  
   後ろから声がして、日生が小走りで追いかけてきた。
   冷やかすような声が聞こえる。
   でもどの方向も似たように男女一緒に帰っていた。
   ただ、と日生だけは二人きりだった。   

   ・・・心臓が煩いのは、冷やかされて驚いただけ。
   再び歩き出したの歩幅にあわせてゆっくり進む。


 
   「プレゼント、何だった?」  
   「・・・・・・帽子」
   「えっ、それってまさか」
   「そう、そのまさか」


   
   ため息混じりにいうと、日生は大爆笑した。
   うるさい!とは思わずその肩を叩く。
   ひとしきり笑った日生は笑いすぎて出た涙を拭いながら言う。



   「でも、俺もそう」
   「え?」 
   「まさかの、自分の」



   日生は手に持った紙袋を持ち上げて、ほらと苦笑した。
   人のこといえないじゃん。
   は思わず吹き出して、笑った。



   「ま、別にいいんだけど」
   「何買ったの?」



   戻ってきても気にならないというなら、使えるものなのだろう。
   そう思って尋ねたに、日生は一拍おいてから
   まっすぐ目を見て微笑った。




   「へのクリスマスプレゼント」


   
         
   ・・・・!?
   言われたことが理解できなくて、はただ目を見開いた。



   「マグカップ欲しいって、いってたよな」
   「う、うん・・・」
   「だったら、貰って」



   嬉しくて、信じられなくて。心臓がうるさい。
   まさか日生から、もらえるなんて。




   「その代わり、その帽子ちょーだい」


   
   
   するりと手が伸びてきて、日生が袋をとった。   
   あまりに素早くて反応できなかった。


  
   「え、ちょっと、日生!」
   「が選んでくれたものなら、なんでもいいから」
   「何言って、・・・っ」


 
   するすると包みを解いて。
   見られてしまった。その、中身。



   
   「あー!これあの雑誌のじゃん!」




   俺ずっと欲しかったんだよ!と日生は目を輝かせる。
   
   は恥ずかしくて顔が上げられない。そのまま立ち止まってしまう。

   明らかな男物。男女いるはずのクリスマス会に持っていくには
   不自然なほど選ばれた一点。
   ・・・だってそれは、教室で日生が欲しいって言ってたものだから。


   

   「・・・・・・日生に、貰って、ほしくて」


  

   小さく言った声に、日生は勢いよく抱きついてきた。
   ぎゅーっと力が込められて、苦しい、けど、それ以上に驚く。
   私の下心は届いたの、だろうか。  
 



   「マジで嬉しい・・・!」




   満面の笑みを浮かべて、お礼といって日生がキスをしてきたのは
   この五秒後。
   



   どうやら、私にも奇跡は起きたようです。