最近、嬉しいこと。





   「先輩」




   前方を歩く小さな身体に、声をかける。
   くるりと振り返ったその人は、降谷を見上げた。

  


   「あっ、降谷君だ。おはよー」
   


 
   朝練お疲れ、とは笑う。

   この前、さりげなく、下の名前で呼んでみた。
   そうしたら、は嬉しそうに笑うのだ。
   最初はちょっと一瞬間があったけど、すぐにえへへと笑ってくれた。
   嫌がられてない。むしろ、嬉しいみたいだ。

   だからそれからずっとそう呼んでいる。
   内心ガッツポーズをとったのは、言うまでもない。  
   


   「もしかして、亮介くんの弟?」

   「あっはい」



   隣にいた春市に気づいて、はまじまじと見る。
   この間は亮介と話していてどうやら気づいていなかったようだ。




   「春市くん、・・・だよね?」

   「はい」


   
   
   哲に教えてもらったから曖昧なんだよねー、と苦笑した。



   「毎日降谷君とっちゃってごめんね」

   「っいえ」   

 
  
   いつも降谷と一緒に居る春市がをみつけると気を使って
   離れていくのに気づいていたようだ。
   春市は顔を赤くする。


   

   「ー?課題早く出してよー!」  




   口を開く前に人に呼ばれて、あっと叫んだ後
   ごめんまたね!とは去っていった。


   



   春市、くん・・・・。






   自分がずっとされたかったことを、さらりとされて
   降谷はちょっと、面白くない。
  



   「春っちズルい・・・」




   じーと春市を見つめ、ぼそりと呟く。
   春市はえっと降谷をみる。



   「えっ、だって、兄貴いるしっ」 
  
  

   どっちも小湊だし仕方ないでしょ、と春市は降谷の肩を
   軽く叩き、眉を下げて微笑った。

   春市には、もう降谷の気持ちなんてわかっている。   

   


   
   「それに、特別な意味はないしね」





   降谷君、顔に出ないけどわかりやすくて可愛いよね、ホント。
   
   そう思いながら、春市はクスリと笑って、すっかりスネてしまった
   友人の機嫌を直すのに口を開いた。