授業が終わるのが早かった。
   教師は自分が限定BLTサンドを買いたいために
   さっさと今日の分を終わらせて礼までして、教室はチャイムが
   鳴るのを待つだけだった。

   ダッシュで出て行った教師とクラスメイトをよそに
   降谷と春市はのんびり歩いて購買についた。




   「あら、今日は早いわねー」
  

 

   毎日通っているせいか、のおかげか、購買のおばちゃんが
   にこにこと商品をくれた。
   空いている購買に、先輩の姿はなかった。

     

   「ちょっと、自販機いってくる」

   「僕も、」

   「すぐだから、ここで待ってて?」 
          
   「・・・うん」



   そういって春市が飲み物を買いに行ったので、降谷は階段の
   ところで待つ。
   自販機は、購買の裏にあるちょっと離れたところにある。
   春市の好きなジュースはそこでしか売っていない。

   降谷は買ったものの一つをあけて、食べるか悩む。
   その手には、がいつもおいしそうに食べているシュークリーム。
          
   
   ・・・気が付いたら、買っていたのだ。


   ここにいたら、もしかしたら会えるかもしれない。
   あげたら、凄い喜ぶのではないか。
   「甘いものは世界を平和にするよ!」と握りこぶしを作って
   力説してたくらいだし。

   思い出して、ちょっと笑う。


   


   ぐうぅぅ。





   ・・・・やっぱ食べ物を前にお預けはむりだ。

   降谷は素直な自分の体に応えるように、ぱくりとかぶりつく。
   甘い。カスタードとバニラの香りが口に広がる。
 
   
  



   「あ、珍しいね」






   春市君待ち?と続けた声と、ふわりとした甘い香り。
   口の中に広がる香りと、同じ。

   はっと、降谷が視線を下げると、目の前でが笑っていた。

   


   「シュークリーム、おいしいでしょ?」 
  
   「・・・はい」




   笑っているのに、は少し、元気がない。
   首をかしげて、降谷は問う。





   「今日は、買わなかったんですか」



 
 
   の手に、シュークリームがないのだ。
   その視線と言葉に、は唇を尖らせた。




   「売り切れだったのー・・・!」      
 
   
   

   そうなんだ。先輩、大スキなのに。

   そう思うと同時に、どうしよう、と降谷は悩む。
   何口か食べてしまったが、あげた方がいいのだろうか。
   いや、でも、それは・・・。


   降谷は自分の手の中にあるシュークリームを見つめ
   考え込む。
   あげてもいい。それで元気になるなら、全然。
  
   そんな降谷に、はふっと笑みを漏らした。
   そして。





 

   「ちょーだい?」







   降谷の手を取って、シュークリームをぱくりと食べた。
 
  


   !




   口の端にクリームをつけて、嬉しそうに笑う
   いっきに元気になった、その表情。
   降谷の食べた歯型と、一回り小さな歯型のついたシュークリーム。

   これ、って・・・・。






   「っ」     
   
 



   降谷は、耳まで赤くなった。・・・他人から見たらわずかだが。
   さっきが触れた手が熱い。
   心臓が、うるさい。    
   


 

   「ごちそうさま!元気でたっ」



 

   ひらひらと手を振って、は走り去っていく。 
   その頬や耳が自分と同じくらい赤いのに、降谷は気づかなかった。






   「・・・・・いただきます」






   その後、シュークリームを食べるのに、色々と苦労した。