後ろの席の人は、今日は居ない。
  
   勝負カン冴えわたる不動の四番。
   今頃、学校から少し離れた球場で安打を量産しているだろう。 
   
   

   「うーん・・・」



   机に突っ伏したまま、は唸る。
   昨日の、あれはなんだったんだろう・・・。
   自分で自分がわからない。



   『頑張ります』



   そういった降谷君の笑顔。
   グラウンドに立っていたときのあの瞳。
   犬みたいに懐いて自分を呼ぶ声。

   可愛い後輩だと、思っていたのに。
   ううん、いまでもそう思っている。・・・けど、ちょっと違う気がする。

   でも私、三年だよ?二歳下ってないでしょ、私。
   
   は考えながらまた、うー・・・と唸る。 
   つっぷしていて周りからは見えないが、その顔は赤い。




   「どしたの、?」



 
   あえて誰も触れないようにしている奇怪なに、一人すたすたと近づいてきた
   友達が、あんたすごい変人よ?と話しかけてくる。



   「うー・・・」

   「可愛い後輩くんが心配?」
   
 

   大丈夫よ強いんだし、と友人は笑った。
   いや、野球部が負けるなんてこれっぽっちも思ってないよ。
   だって安打生産機がいるもの、私の幼馴染が。
  


   「・・・・・・可愛い?」

   「可愛いんでしょ?自分で言ってたんじゃない」
   
   「・・・・・・・・・・」


  
   確かに、言った。だってそう思ってたんだもん。でも。
   黙り込むに友人はあら、と目を開く。

   


   「マウンドでは、別人みたいよねー」
   
   「・・・うん」




   そうだ。
 
   練習中。マウンドの上。試合。
   野球をしているときの彼に、私が思ったのは・・・一つ。
    
   友人は口の端をあげて言った。






   「かっこいいわよね、降谷暁くん」






   かっこいい。
   一人の選手として、・・・異性として、そう思った。
  

 


   「・・・・・うん」




   こくり、とが頷くと、友人はクスクスと笑って
   の頭をぐしゃりと撫でた。
  
  

   
   「、耳真っ赤よ」
 
   「きっ、気のせいだよっ」

   

  
   そんなはずない。
   降谷君のことで、顔が熱るなんて。
   そういいきかせた。
   
   だって降谷君は、可愛い後輩。・・・・・・だよね?