それから日は過ぎて、準々決勝前日。
   青道は勝ち進んでいた。
   
   あれから何回かはメールをくれた。一日ニ通くらいしか
   できないが、降谷には凄く励みになった。何よりも嬉しい応援だった。
   降谷に会うたびにニヤニヤ笑う御幸先輩にも、感謝だ。

       
   
   「降谷、ちょっとパシられろ」

  

   御幸先輩と倉持先輩に頼まれて、すぐ近くのコンビニに買い物に出た。
   プリンとポテチと・・・自分用にアイスを買おう。
   そう思って、降谷は夏夜の中を歩き出した。

   ぱたりとしまった扉の向こうで、先輩たちが笑っているのには気づかなかった。




   「どれにしよう・・・」

   

   
   やっぱりソーダかな、さっぱりするし。
   少し悩んだ後、選んだアイスを持ってレジへと並ぶ。
   前にいるのは、赤茶の髪の人。
   降谷が並ぶと同時に会計が終わって、振り返る。



   「あっ、降谷君!」


  
   その人は、ちょっと驚いたあと微笑った。先輩、だった。

   甘い香りと、笑顔。久しぶりだ。
  
   キャミソールからでる白い肌がまぶしい。身体の線がはっきりとわかって
   なんだかどきどきした。思った以上に細い肩と腰。そして意外と・・・・・・。


 

   「315円になります」




   店員の声にはっとして降谷は会計を済ませる。
   はそれを待って、二人でコンビニを出た。 
   



   「久しぶりだねー」


   

   二人は、並んで歩く。
   の小さな歩幅にあわせて、ゆっくりと。  
   家は寮のすぐそばにの家はあるようで、一緒に帰ろうと誘ってくれたのだ。  

   星が綺麗だった。先輩と話しながら歩く。
   そんな遅くないのに、周囲に人はいない。二人きり、だった。

   

   「明日準々だよね?」

   「はい」


  
   アイスを食べながら、二人が話す声だけが響く。
   


   「補習、終わったんですか」
  
   「・・・降谷君に言われたくないなぁ、それ」

   「・・・・・・・・・・・・・・」

   「はい無視!・・・もー、私ももっと早くに補習したかったよ」
 
      

   ブーブー、とは唇を尖らせる。


 

   「でも、今日で終わりっ」  


   

   はピースをつくって笑った。

   いつもより少し、近い、距離。
   自分の心臓が煩いのを、言葉を紡ぐのにどれだけ緊張しているかを
   に気づかれていないといい。降谷は少し動けば当たりそうな腕を
   緊張しながら振って歩いた。

   

   「よかったですね」
 
   「うん!これで野球観れるよー」


       
   哲も亮介くんも煩くてさー、とは頬を膨らます。
   
   他の人の、名前。
   ・・・そうだ。先輩は僕のものじゃないんだから。
   他の人をみて、当たり前なんだ。
   
          
   ずきん、と胸が痛む。






   「・・・・・・・・・・・・」






   そうか、僕は。
    


   急に黙った降谷には首をかしげて、その顔を覗き込んだ。
   きょとん、とした大きな瞳。白くて、細い身体。
   生温い風が運ぶ、甘い香り。赤茶の髪がさらりと揺れる。


   気づいたら、その細腕を掴んでいた。


   




   「応援、してくれませんか」







   小さく、呟くように言葉が出た。

 


   「えっ、もちろん降谷君もするに決まって、」

   「・・・・・・僕だけ、を」




   え、と目を開いて、先輩は固まる。


   そうだ、僕は、先輩に僕だけを見ていて欲しい。
 
   
   じっとみつめる。は熱い手と視線にどんどん赤くなっていく。
   可愛い。愛しい。
   胸の中に、ちょっとずつ積もっていった想い。
   











 
   「・・・好きです」







 




   夜の闇に、その声はよく響いた。