準々決勝が終わった日の、夜。
は降谷のもとを訪れた。もちろん寮に行くわけにはいかないので
近くのコンビニで待ち合わせて、傍の小さな公園へと移動した。
公園といっても、滑り台と砂場と変な動物の乗り物があるだけ。
ガードレールに座って、は笑った。
「お疲れ、降谷君」
「・・・・・・・・・」
だが、降谷はつーん、と返事をしない。
その理由に気づいて、は顔を赤くする。
「っさ、さとる・・・」
「何?」
「・・・・・っ」
嬉しそうに返事をする降谷に、文句の一つでもつけたいところだったが
まっすぐにみつめられて、視線をそらした。
ちょっと、何なのこのこ!
「・・・ホームランも、打ったんだってね」
「うん」
「降谷君、私スタンドにいたのに気づかなかったでしょ」
「・・・・・・・・」
「暁・・・くん?」
「・・・くんいらないです。それに、気づいてましたよ」
名前を呼ぶたびに恥ずかしそうに言葉を詰まらせるに、降谷は笑みを漏らす。
キッと降谷を睨むが、その頬は赤く、なんの迫力もない。
・・・可愛いなぁ、ほんと。
「・・・」
小さく、名前を呼ぶ。
同時に降谷はを抱き寄せた。
「ちょっ、降谷君!ここっ、外っ」
公共!と耳まで真っ赤になって、逃れようとする。
降谷の胸を押し返し、叩く。でも、びくともしない。
ちょっと、痛い・・・。でもそんな姿もとても可愛らしく感じて。
「・・・・・・・・・」
抵抗されるのも痛いので、降谷はを強く抱き締めた。
熱い体温。鍛えた体躯。Tシャツからでる肌が直接
の肌に触って、吸い付くように熱い。
どくどくとの鼓動は速くなっていく。
この熱は、どっちのだろう。
「・・・・・っ」
「充電」
身長差が大きいので、の頭を抱える形になるため
耳元で声が響く。
低い声に、はびくりと肩が跳ねた。
「(・・・・・・くそぅ・・・・っ)」
顔は見えないが、降谷はの反応が嬉しいようで
抱き締める力を強めた。
こ、このまま負けっぱなしってどうなの私・・・!
「・・・好きだよ、暁」
ぴくり、と降谷の身体が揺れる。
ちょっと首を動かして見ると、耳が赤い。
少し落ち着いたは気づく。・・・心臓の音、すごい。
なんだ、君もか。
そう思うと、嬉しくて笑みがこぼれる。
「何、笑ってるんですか」
「え」
降谷は少し身体を離して、を見つめた。
その視線に応えて、はニッと悪戯に笑った。
「仕返しー」
年下に負けっぱなしは性に合わないからね!
「・・・・・・・・・・・」
だが次の瞬間、またが固まる番だった。
「・・・嬉しい」
降谷が身をかがめて、鼻をくっつけて、微かに笑んだ。
その前に唇に感じたのは。ひんやりとした感触。
下唇をぺろ、と舐めてそれは離れていった。
ぼっ、と顔から火が出そうなくらい、の顔が熱くなる。
「・・・・・・っ!」
「もう一回・・・」
そういいつつ、降谷は鼻をのそれにすり、と擦りつける。
至近距離にある端整な顔。逃してくれない熱い視線。
この人、本当に私を好きなんだ。
初めてそう実感して、心臓が跳ねる。
・・・嬉しいけど、言葉にしたら負けな気がして、代わりには静かに瞳を閉じた。
小さな唇が、降谷には愛しくて愛しくて、堪らなかった。
口付けはの香りと同じ、甘い味。
おまけ
「降谷!いつまでイチャついてんだー?」
「・・・・・みゆっ・・・・!」
「ヒャハ!スミに置けーねーなぁお前もっ」
「うわ、先輩、顔真っ赤でかわいー」
「降谷も意外と手が早いね」
「こりゃ哲さんに報告だな」
「って、み、みてたのっ!?」
「「「当然」」」
コンビニにがいくように哲に仕向けさせたのが亮介、それを聞いて
降谷をパシらせたのが御幸、便乗して手を組んだ倉持でした。