先輩・・・家、このすぐ近所だってわかった。
   登下校で会うことは出来ないけど、どうせ朝練だし寮暮らしだし
   気にしない。むしろ、いつもグラウンドの脇を通って帰る姿が見れて
   よかった。

   それに、購買に行けば大体会える。

   そう思うと、自然に足は毎日購買へと向かう。
   本当はお小遣厳しかったりするけど、育ち盛りだしお腹すくし
   親にお願いするしかない。ごめん母さん。

   
 


   「あ」



   
   赤茶の髪をみつけ、思わず呟く。いた。
   嬉しそうにシュークリームとエビカツサンドを抱えて、
   今日も溢れかえる人垣から、出てきた。




   目が、あった。  
  



   「っ」




   思わず、会釈した。
   そんな降谷を見てきょとん、とした後、すぐ笑顔になる。






   どくん。





   心臓が、跳ねた。
 

  

 
   はくるりと身を翻して、教室へと戻っていった。
   立ち尽くしたまま、降谷はそれを見送っていた。
 






   +







   教室に戻ってきたは、先ほど買ったばかりのエビカツサンドを
   開けて、後ろ向きに自分の席に座る。
   


   「ねぇ、哲」
   
   

   後ろの席は、野球部主将の結城哲也。ちなみに幼馴染。
   将棋の本を読んでいた結城は、本から視線をへと移す。




   「なんだ」




   エビカツサンドを齧りながら、将棋弱いのに好きだよなぁと
   心の中でくすりと笑った。



   「一年生のさ、背の高いエースくん」
   
   「・・・降谷か?」

   「あ、そうだ!降谷君だ」


 
   そうだそうだ思い出したー、とは一人で納得する。
   青道の怪物君。有名人だけど、野球部は人数が多いから
   全員の顔と名前を一致させるのが難しい。
   そんなに、結城は訝しげに見つめた。





   「降谷がどうかしたのか」




   何かしたなら締める、といった感じで聞いてきた結城に
   はいじめられてないからね!と手を振る。
   

  
   「最近、よく購買来るから」   
    
   「・・・お前ほどじゃないだろう」

   「うるさいなぁっ。好きなんだからしょうがないでしょ」



   三年間ほぼ毎日購買に通っている女も珍しい。
   結城はふっと笑った。




   「いっつもしゃけおにぎり買ってるよ、彼」
    
 
   

   ぼーっとしててちょっと面白いし、おばちゃんも気に入ってるみたい。
 


   そう言ったの笑顔に、結城は本に視線を戻し
   口の端を上げて笑った。