夏休みに入って、一週間。
   そろそろ宿題終わらせといたほうがあとで楽かなぁ、なんて
   思い始める、時期。

   友達からかかってきた電話で、夜集合が決まった。

   が転校するらしい。
   それで、出発は明後日だというので
   最後にみんなで遊ぼうということになった。 

   いつもだったらサッカーの練習もあるし、面倒だから断っていたけど
   はいつもにこにことしてて、大人しいのかと思えば
   騒ぎの中心にいたり、頭いいのかと褒めれば数学は俺より下だったり
   と、なにかと面白くて、一緒にいて楽しい奴だった。

   朝からボーリング行って、カラオケ行って、夜になったら
   花火をして。一日遊びまくってすごした。
   
   十時になって、だいたいみんな門限がきて、解散することになった。



   「また逢おうね、」   

   「元気でな、

   「宮崎とか遠すぎだろばかー!」


 
   みんな口々にいろんな別れの挨拶をして、それぞれの帰途へとつき、
   前を歩いていたも曲がり角に差し掛かったときに、



   「私の家こっちだから」



   と、一馬の方へと振り返った。


 
   「じゃあな、

   「うん。今日はありがとね」
   


   すっごく楽しかったよ、ほんとに、ありがとう。
   そういって、は微笑んで、背を向けて歩き出した。
   

   その瞳が、なにかいいたげだったのは、気のせいだろうか。


   一馬はいつものように小さい歩幅でちょこちょこと歩く
   の後ろ姿を少し見送って、自分も歩き出した。
   



   「真田、くん!」




   すると、帰ったはずのが、走って戻ってきた。
  
   は一馬の目の前に立ち、いきなり、その小さな唇を一馬のそれに重ねた。




   「っ」



   
   一瞬だけの、本当に、短いキス。






   「私の、ファーストキスだよ」       
 





   いたずらに笑って、その一言だけを残して、は再び走り去った。

   一馬は現状が飲み込めてない頭で、自分で分かるほど煩くなる心臓の音に
   更に混乱して、シャツの胸のあたりをぐしゃりと握った。

   







  (できるだけ深くあなたに刻み込みたかったの)







   
   その日から一度も会ってないし、が元気にしているかはわからないけど。

   あれが俺の、初恋なんだと、思う。