最高気温7℃。
   秋から冬に移行する時期とはいえ、まだ秋なはずなのに。
   寒い。でも、頬を撫でる冷たい風は好きだ。
   冷えたときこそ、何が自分を温めるのかも実感できる。
   この時期は、とても優しい。



   「今日はフットサル行かないの?」

   「直樹が風邪でダウンしたから、中止」
  
   「え、直樹って風邪ひけるんだ!」
  
   「・・・確かに」

   

   左に翼、半歩後ろの右に柾輝。
   凍てつく空気の中を、三人で帰る。いつもの光景。
   あと半年でこの日常は終わるけれど、それは考えないようにする。
   翼の白くてほわほわのマフラーが眩しい。
   似合ってるし、可愛い。

   

   「が入るならできるんだけど、フットサル?」
   
   「ご遠慮します」
  
   「チッ」

   「うわーん、柾輝っ。翼が舌打ちしたよ、今!」
   
   「監督命令とはいえ、する気満々だったからな」

   「こんな日に、無理!」   
   


   とてもじゃないが、やる気がしない。
   寒い日の運動もいいと思うけれど、風も強い今日は遠慮したい。
 
  
   
   「運動した方があったまるし、やろうよ」

   「無理。寒い。帰ってドラマ見る」

   「・・・肥えるよ?」

   「ぐっ。室内フットサル場探してきてよ、じゃあ」

   「近場にない。てか、も微妙に鼻声だな。・・・あーもぅ、どうしてこう皆して」

   「風邪なんてひいてない、」



   もん、と続けようとしたとき。
   くしゅん、とタイミングよくくしゃみが出た。
   




   「風邪ひくぞ」





   ふわ、と首に温かいものが巻かれる。       
  

     
   「・・・なんか煩わしくない?マフラーってさ」

   

   首輪みたいでさぁ。    
   巻かれた柾輝のマフラーを触りながら、はちら、と彼を見る。
   俺は平気だから、とその意図を察した柾輝は、両手をポケットにいれる。
   もうちょっとで着くとはいえ、彼の首は寒そうでみていられない。
  



   「黙って巻いとけ」
    



   でも目を細めて、そういわれて逆らえなかった。
   年下のくせに大人びた表情。心臓が跳ねた。

   ありがと、と小さく言って、マフラーに顔を埋める。
   さっきまで柾輝がしていたから、そのぬくもりが残っていた。
   彼の香りがして、更にドキドキする。
   赤くなった耳も頬も、マフラーで隠す。

   そのやりとりをそ知らぬ顔でみていた翼が、わざとらしくため息をつく。



   「毎度毎度、こんな寒いのになんでマフラーしてこないかな」
  
   「ほんと。翼がやったの、あるだろ?」

   「うー・・・手袋とセーターがいいんだもんー」
 
   「寒がってるくせに」



   マフラーは首輪。コートは鎧。
   そんな気がして、嫌だった。どちらもなんだか重くて。
   翼から貰ったマフラーはふわふわであったかくて可愛いんだけれど
   学校に来るときはするのがもったいなくて、使えない。

   それに、理由はもう一つ。




   「もう柾輝のマフラー、専用になってるじゃん」




   赤くなったの耳に気づいて、翼は微笑む。
   その瞳にある、悪戯な輝き。

   彼は全部、気づいている。だからこそ、にマフラーをくれたのだ。
   学校には・・・正しくは、翼たちと一緒に出かけるときには、しないと知っていて。

   いじわる、と思いつつ、なんでもないように笑う。


   
   「だね。よろしく、柾輝」

   「が風邪引いたら、柾輝のせいだからな」



   クスクス、と二人の笑いが重なる。




   「・・・マジかよ」

   
   

   苦笑した柾輝が、あまり嫌そうじゃないのは気のせいかな。       
   気のせいじゃないと、思いたい。
   私たちは、もちろん翼も含めて、この距離でいるだろうから。   
     



   「うん。一生ね!」




   だからずっと、そばにいて。

   言葉の裏に隠した気持ちに、彼は気づいただろうか。