昼休み。食堂に入るときに、廊下で立っているを見つけた。
   どうやら、人を待っているようだった。
   倉持に呼ばれて、先輩たちもいたのでそのまま食堂に入ったけど、
   確かにの隣にいるのは降谷だった。
   食堂から二人の姿はよくみえた。俺の席からだけだけど。
   口の動きで、会話を読もうとするが、半分も理解できなかった。
 
     

   「・・・でしたよ」
  
   「そっか。降谷君は?」
  
   「普通でした。・・・ですか?」

   「うん。・・・のに、・・・・・・ないよ、きっと」
  
   「でも、・・・・・・したよ」
   
   「ほんとっ?だったら、嬉しいな」
  
   「・・・たんじゃ・・・・・ですか?」

   「・・・・・・・・優しいね。・・・なんだ、・・・頑張ってね・・・っと・・・みてるから」
 
   「ありがとうございます」

   「ううん、こっちの台詞。・・・・・・」



   はにこやかに、柔らかく笑っていた。
   昼休みの廊下は案外人が少ない。くすくす、というの声は意外と遠くまで響いた。
   少し恥ずかしそうに笑って、は降谷に可愛らしくラッピングされた包みを上げていた。
   クッキーだった。
   
   一口食べて、降谷はおいしい・・・と呟く。
   それを聞いてとても嬉しそうには飛び跳ねた。
   傍から見ると恋人同士のような、淡く柔らかな雰囲気。

   最後の一口と共に、おれは立ち上がっていた。
   隣に座る倉持が「けけ、今更かよ」と笑っていたが、無視する。



   「ごちそうさまでした」

   「いいえー。でもよかったー、喜んでくれて」
  
 

   という二人の和やかな会話に割り込むように、俺は声をかけた。





   「なーに、してんの」





   俺はを後ろから抱き寄せた。肩から手を廻し、がっちりとホールド。
   のしかかるように体重をその小さな身体に預ける。うわ、やらけー。

   俺の登場に、二人の会話が止まる。

 

   「別に。可愛い後輩と話してただけだけど?」

   「何で降谷にクッキーあげてんの?」

   「いいでしょ。あたしの勝手」

   「の大好きな、俺には?」


   
   昨日の調理実習にくれなかったお詫びとか。

   耳元でわざと息が掛かるように話す。
   抱きしめているのと、耳で感じているらしいの耳は少し、赤い。
   人前でこういうことをするのが恥ずかしくて嫌がるは目の前の
   降谷に視線を泳がせて、俺へ睨むように視線だけをむけた。


  
   「あんだけ貰ってまだ食べるの?太るわよ」

   「いやー、このぷにぷにが好きよ、俺」

   「って、何普通に人のお腹撫でてんのっあんたは!」   


   
   べしっと撫でている手を強く叩く。
   すると正面から小湊がきて、少し遠くで降谷を呼ぶ。
   降谷は何もいわず一礼すると、去って行った。

   

   「えっ、ちょっ、降谷君っ。ごめんね、また後でね」

             
   
   は肩口に顔を埋める俺に頭突きをして、あまりの痛みに腕の力が
   緩んだ隙に離れていった。
   俺、彼氏なんだけど。何この扱い。




   「なぁ、何の話してたわけ?」


   
   
   頬を染めて。優しく笑って。 
   ころころを表情を変えて、愛しげに何かを見つめて。
   あんな顔、他の男にするなんて。




   「好きですーみたいな顔してたぜ、



   
   キスした後の瞳に、似ていた。




   「っ、御幸には関係ない!」

   

 
   真っ赤な顔をして、は俺を睨んだ。
   何、それ。許せないっつの。俺以外の男にそんなに心を砕くなんて。

   


   「・・・浮気だったら、今すぐヤる」
  

     

   小さく呟くと、愛しい恋人から降ってきたのはキスじゃなくてチョップでした。




   (あんたの話だっつの!)  
    





















   *おまけ*
 
   「昨日は本当に調子よさそうでしたよ」
   「そっか。降谷君は?」
   「普通でした。あれ、昨日のことは聞いてないんですか」
   「うん。隠していれたのに、気づきもしないよ、きっと」
   「でもニヤつきながら食べてましたよ」
   「ほんとっ?だったら、嬉しいな」
   「気づいてたんじゃないんですか?」
   「まさか。優しいね。今日は暇なんだ、部活頑張ってね。ずっと練習みてるから」 
   「ありがとうございます」
   「ううん、こっちの台詞。ありがとね、いつも御幸のこと教えてくれて」