夏の予選大会。

   見に来い見に来いうるさいし、いつまでも引きこもってても
   身体に悪いから、暑い球場には来ていた。

   今はまだ一個前他の学校の試合が遅れてて、五回裏くらいで
   まだまだ終わっていないため、青道は待機している。
   差し入れの要求があって、ついでだから持っていこうと思って 
   メールしたら、すぐ返事が来て、指定されたとこへと向かう。

   御幸は頭にタオルをかけて、座っていた。



   「御幸」

   「おぉ、

   「はい、差し入れ」

   

   ペットボトルに入ったスポーツドリンク。
   市販のをちょうどいい濃さに薄めて、昨日の夜から凍らせた。 
   暑い今日の気温で融けて、これからちょうど飲み頃になるだろう。



   「全員分ないんだけど、いい?」
 
   

   は苦笑する。さすがにそんなに持ってくる体力はなかった。
   それに、一応マネジで用意してあるのあるし、迷惑だと思ったのもある。


   
   「俺の分だけで、充分です」
  
   
  
   にっこりと御幸は笑った。

   うわ、めっちゃ機嫌いいぞこいつ。
   これから大事な試合だっていうのに、変な緊張とかないんだなほんとに。

   

   「うわー、にしてもほんとにが来てくれると思ってなかった」   
   
   「来ちゃマズかった?」

   「逆、逆!いつも絶対こないじゃん」

   「まぁ、ね」

   「だから、すっげー嬉しい」



   渡したペットボトルのうちの一本を首にあて、生き返るーと
   御幸は気持ちよさそうに、目を細めた。
   
  

   「他の子みたいに、お守り作ってあげれるほど器用じゃないからさ」
   
   「ははっ、確かにには無理だわな」

  
   
   マネジが部員全員に配るお守りとか、哲さんみたいに彼女から貰うお守り。
   他の部員たちをみてても、バッグには誰もが手作りのお守りをつけてた。
   野球部に好きな人がいる女の子はいつも必勝祈願みたいに可愛いお守りを
   つくって、プレゼントするっていってるし。

   でも、不器用なはそれをしてあげれない。
   一軍で、六番打ってて、正捕手で、大注目されてる選手である彼氏だって
   いうのに、つくってあげれなくて。
   ずっと、気に掛かっていたから。
  
  

   「まぁ、物なんかいいんだって。大事なのはやっぱ、ここでしょ」

 

   御幸はとんとん、と自分の胸を叩いた。
   
   そんな可愛いこと思ってくれてたなんて、それだけで嬉しすぎだっつの。
   俺ばっかすきなのかと思うくらい応援誘ってもフラれまくってたし
   からキスしてくれることもないし、学校だと触ると怒るし。
   だから、ほんと、やばい。嬉しい。
  


   「あ、でもがキスの一つでもしてくれたら、絶対打てそうな気がするなー」



   にしし、と御幸は笑った。  
 
   どうせしてくれっこないけどなーとか思いつつ、御幸はいつもみたいに
   ばかじゃないの、と返してくる言葉を待っていたが、
   返ってきたのはそういう言葉じゃなくて。

   は、ただ御幸の名前を、呼んだ。   




   「・・・一也」



  
   滅多に呼ばない、名前。


   同時に頭にかけていたタオルを目隠しみたいに前にずらして、
   は、そっと御幸に口付けた。
 

   

   「・・・・・・っ」

 


   不意打ちに、さすがの御幸も頬が熱くなるのを感じた。









  「お守り」








   は恥ずかしそうに、そう小さく呟いた。

 
 

   「打たなかったら、殺す」

   「・・・わぉ」