私は席官には程遠い、能力の低い四番隊員だ。
斬魄刀での戦闘ができない、席官の方々のように死神を治すこともできない。
まだまだ、見習いといった方がいいレベル。
そんな私は運ばれてきた死神の連絡をすることが多い。
この間運ばれてきた死神は、まだこの四番隊綜合救護詰所から現場に復帰していない。
花の行方
「恋次さん・・・またこんな酷い怪我を・・・・っ」
いつもいつも私の元に来るときの貴方は
包帯をたくさん巻き、尊敬する席官の方が治すほどの怪我をしている。
私は元気な貴方を近くで見たことが無い。陰からでしか、見ていない。
この間運ばれてきた恋次さんは大量に出血していて、刀傷は深く
報告する私の心を不安にさせた。
もうやめて、なんて言えない。そんな立場じゃない。
そして何より、貴方は戦いを誇りにしているから。
酷い怪我をしても、貴方は必ず前線に戻り、いつものように元気にしているから。
私がどんなに不安であろうと、私の想いは貴方に届くことは無い。
関係など、ないのだから。
「・・・・・蛇尾丸も無事だったんですね・・・」
目の前の寝台で規則的な寝息を立てて眠る恋次の髪を、軽く梳いた。
額に張り付いた彼の紅い髪をはらい、汗をぬらした布で拭った。
「早く元気になって・・・・下さい」
言葉に詰まる自分はどうかしていると思う。
元気になってくれるのは嬉しい。
でも、怪我をしているときは二人っきりになれる、一緒のときを過ごせる。
そんな浅ましい想いが自分の中にある。
届かない、そう想っているくせに、諦めきれないのだ。
自分でも嫌気が指す。
そんな思いを払うように、はいつものように
恋次の枕元に花を置いた。決してきつくないその香りが届くような距離に。
いつもこんなにも堂々と行動できるのは、恋次が当分起きない自信があるから。
先ほど、痛み止めの薬を飲んでいたのを確認済み。
がきていることを恋次は知らないだろう。知られないようにしている。
寝ているときを見計らって、汗を拭いに、状態確認をするために、きているのだから。
そう自分に言い聞かせる。
私は貴方の力にはなれない。
護廷十三隊でもお荷物といわれている四番隊の見習いなんて、なんて役立たずなんだろう。
それに引き換え、目の前で眠る人はあの六番隊の副隊長。
遠い、遠い、眩しい存在。
「・・・・んっ」
恋次は時折、とても苦しそうな声を上げる。
精神的な何かがあるのか、それとも負った傷がそれほど痛いのか。
本人に直接きけないは声が上がるたびに心臓がはねる。
起きないで。起きないで。みないで。起きないで。
話をしてみたい。貴方と直接言葉を交わしたい。起きないで。
私のことを気付いて欲しい。気付かないで。厭だ。駄目。
矛盾した想いが恋次を見るたび毎回こみ上げる。
今もまたそうなった私は逃げるようにその場を後にした。事実、逃げ出した。
いくら私が貴方を愛しく想っても、貴方は気づかないだろう。
こんなちっぽけな私のことなど。
誰からも慕われ、尊敬され、更なる高みを目指していく貴方には。
「・・・・・・・・・・・・・貴方には、届かない」
何十年、何百年かけて私が努力しても、貴方はどんどん先に行く。
いつか追いついてみせる、そう思っていたいくらいに。
今日も私の瞳から、いくつもの涙の粒が落ちた。
そして、
私の想いなんてこの世界にとってはちっぽけで
時は無情にとても早く過ぎてしまう。
「阿散井副隊長、復帰おめでとうございます」
「・・・おう。世話になったな」
勇音副隊長や他の隊員が笑顔で送り出す中、
私はそれをみながら一人、山済みになった書類を机に運んでいた。
懐には、今日渡すはずだった花。
もう恋次さんの傍に寄ることなどできない。
行方を失ったこの花はどうなるのだろう。