それぞれの思いを胸に秘め
ダンスパーティーの夜はきてしまった。
心の行方
氷で出来たような透明の部屋。
とても綺麗なその舞台に、彼女はやってきた。
ちょうどハーマイオニーのドレス姿に呆然とした後。
言葉が出なかった。
驚きを隠せなくて、多分まぬけに
口をあけていたのではないかと自分でも思う。
こんなに彼女は綺麗だっただろうか。
先ほどハーマイオニーをみたときとはまた違うことを思った。
呆気にとられるのではなく、自分の知らない人がそこにいる感覚。
『一応、女の子』なんて台詞、よく言えたなと
内心大きく息を吐きながら頭を抱える。
は優雅に階段を降り、ロンの隣に立つ。
ペアの女の子でさえ、綺麗だと見とれていた。
「素敵ね、ハリー。ジェームスさんを思い出すわ」
「ありがとう」
白の生地に何枚も蒼い透ける生地とレースを重ねたドレス。
ドレスローブとペアの子の反応でへこんでいたロンに
彼女は追い討ちをかけた。(両方の意味で、ね)
「・・・随分と独創的なドレスローブね、ロン」
でもみたことあるわ、とはロンが先ほど
ハリーに対していった言葉と全く同じことを言って笑った。
「そういえば・・・ハーマイオニー、とっても綺麗だったわね」
このようなパーティーに休みのたび、たくさん出席させられていると
嘆いていた彼女の動きはとても清廉されていて優雅だった。
「あそこまでいかないだろうけど、私も一応女の子だから」
どう?と一回転した彼女からは、いつもと変わらぬ
甘いお菓子のような香りがした。
ブロンドの髪がよくドレスと背景に映えていた。
とても綺麗な微笑を浮かべているにも関わらず、彼女の言葉には
普段と変わらぬ嫌味が込められていた。
その嫌味にぐっと何もいえなくなる。くそ。
はずっと友達で、一緒にいて、男女とか家柄とか関係なくて
とてもいい奴で気丈に振舞ってるけど実は泣き虫で・・・。
そこまで考えたが、すぐに払う。
いや、否応なく払われた。
自分がどんな答えに辿りつきたかったかが、薄っすらとわかりそうだったのに。
「やぁ、ロニー坊や。随分浮かない顔だな」
自分の兄の声。ジョージだった。
やはり先ほどのと同様な反応をした。
ドレスローブへの反応はもういいよ。
は慌てて苦笑と礼をする。
「ごめんなさい、遅くなっちゃって・・・」
申し訳なさそうに言う彼女に、別に構わないさと笑って
ジョージはさりげなく腰に手を回す。
細い腰に大きな骨ばった手があるのに、なんともいえない気分だった。
その気分が何を示すかを、考えられるほどの余裕など今はない。
はそのままジョージに連れられ、どこかに行ってしまった。
彼女のダンスは遠くで見えたけれど、とても綺麗で
まるで違う世界に生きる人を見ているようだった。
ゆったりとした音楽は、意識を遠くさせるのに充分すぎた。
仲が戻ったハーマイオニーに、後に部屋で怒鳴られた。
叫ぶような声で、まるで魔法使いなのにダンブルドアを知らない
人をみるような表情だった。
「あの子のドレスを見ていなかったの、ロン?」
「・・・みていたさ、綺麗だったな。馬子にも衣装」
「そういう問題じゃないでしょう?問題は色よ」
「色?」
ロンとハリーが声を揃えて聞き返すと、ハーマイオニーは
考えられないといった感じで大きく息を吐いた。
「白のドレスだったでしょ!」
何枚も青の生地を重ねていたが、確かに白を基調としていたと思う。
祖母が同じようにこのダンスパーティーで着たドレスだと
嬉しそうに言っていた気がする。
彼女の母親から届いた物は純白のドレスだったが
彼女はそれを持って苦笑していた。
理由は何だっただろうか。
ロンが考える前に、答えはハーマイオニーが苛立った様子で言ってくれた。
「白いドレスはウェディングの色だから、着たくないって」
「・・・あぁ」
綺麗なドレスだ、と注目を集めていたが
はそれを持って、ハーマイオニーに同意を求めるように
苦笑していたのだ。
とても大切な色だから、そんな軽々しく着たくない。
そう俯いて言っていた彼女は、当日は金の縁取りのついた
桃色のドレスを着ると、微笑ったはずだった。
それなのに、何で彼女は白を基調にしたドレスをきていた?
その思いにたどり着いたロンをハーマイオニーは睨みつけた。
大切な何を失ってしまったときの悲しく傷付いた瞳だった。
眼差しには怒りが見て取れた。
「は、彼が相手なら白を着ていいってことなのよ?」
それがどういう意味か、わかってるの?
ダン、と机が強く叩かれる。
響いたその音を気にするのはハリーくらいで、ロンは
もう何も考えられない状態だった。
世界が回る。頭が現実を、導かれようとする答えを拒否する。
ぼんやりとした頭に、彼女のブロンドが映えたドレス姿が浮かんだ。