ダンスパーティーも対校試合も終わった。

   無事とはとてもいえない恐怖と悲しみが残ったが、

   平穏に近い日々に戻った僕にとって、もっと現実的な恐怖がきたのだ。

  
   最近は以前ほどきていなかっただったが

   今回はウィーズリー家で過ごすらしい。

   歓迎する家族たちの声を聞きながら、ロンは自分の部屋へと入った。

   逃げ出すように去ったその後ろ姿を、気付かれないでほしい。  
  







     心の行方








   ベッドに倒れこむと、ロンは大きく溜め息をつく。

   幸せが逃げるのよと、昔いわれたことが頭に浮かぶ。
  

   外からはと家族の笑い声が聞こえる。

   フレッドとジョージが構わずくっついているようで

   ジニーの抗議の声がした。



   「私のなの!」

   「「何を言ってるんだよ、我らが姫だろ?」」

   「フレッド!ジョージ!やめてよ、ちょっと」

   「別にいいだろ、僕らの仲じゃないか!」


      
   そんな声が響いて、ロンは耳を塞ぐ。

   いつもなら、と話すのは僕で、彼女はこのベッドに腰掛けていて

   ジニーが髪を弄らせてもらいにブラシとゴムを持ってくる。


   それなのに、今の状況は何。


   頭はぐちゃぐちゃ混乱したままで。ハーマイオニーには怒鳴られて。

   やっと冷静に考えることが出来ると思えば、僕以外の人と楽しそうに

   話している声が響く。   

   フレッドとジョージの笑い声にとても腹が立った。


  
   「わっ、すごい!これがだまし杖!べろべろ飴もある?」

   「もちろん。でも君には、あげないよ」

   「舌が1メートルくらい伸びるんだ、絶対あげない」

   「そっか、残念だわ。でもだまし杖はいいでしょう?」

   「・・・悪戯好きとは驚いたな」

   「あ、べろべろ飴、ロンに食べさせてくれば?」

   「だめだめ、おばさんにバレちゃうわ」

   「げ!それは嫌だな、せっかく死守した残りだし」
  
   

   双子の兄の発明した悪戯おもちゃで楽しそうに遊ぶ彼女。

   楽しそうな笑い声は、ロンの気持ちなどお構い無しに、ずっと響いた。 




   そんな日が、三日ほど続いた。 




   夜になって、皆が寝付くと家の中は静まり返る。

   危うくフレッド達のベットで寝かされそうになった

   ジニーに抱きついたらしい。

   今夜の勝者はジニーだ。

   まだ当分ある休みで、毎晩彼女を取り合う争いがされる。

   今までなら敵はジニーだけでが僕の後ろにしがみついて

   戦いは終わっていた。

   手強い兄たちは彼女の存在すら知らなかったというのに。

   
   枕を抱え込み、笑い声もなくなったところで

   ようやく冷静に考えられる。

   同時に思い出すのは、ハリーに帰りがけに聞かれた一言。




   「僕は一体、」




   彼女をどう想ってるんだ?
 
  

   四六時中、フレッドかジョージといるようになった

   ロンとすごす時間が殆どなくなった。

   憧れていた二人とやけに仲良くなって、彼女は

   さぞかし嬉しいだろう。


   そんな彼女を見て、想って、やるせない気分になる。

   ずっと一緒だったのに、急に態度が変わったのが嫌だった。

   話しかけようとするたびに、邪魔に入る兄たちが疎ましい。

   自分といるときと同じ笑顔を向けるが見たくない。




   『ハーマイオニーって子が、好きなんだろ?』




   あのとき同様、答えに辿りつけそうになった途端

   兄の声が頭の中に響いた。 
  
   口の端をあげて、マクゴナガル先生と踊らされたときのような

   からかった表情が甦る。  


   本当に、そうなのか?

   確かにハーマイオニーがドレス姿でクラムと踊ったとき

   複雑な気持ちだった。
  
   初めて、ハーマイオニーを自分とは違う者だと思った。

   憧れのクラムと一緒に踊っているのをみて、溜め息ばかり出た。

 
   でも、


   に対するこの気持ちとは似ているようで違う。

   じゃあ、何だというのだろう。   


   ・・・こんな風に悩めるような性格してないのになぁ、僕。  
 
   
   首だけ動かして、窓の外を見るとそこには

   ぽっかりと丸い月が浮いていた。
   
   

   『もう・・・・・・で、』


   『・・・・・・だよ』



  
   甦る幼い声。

    
   ガバッ、と上半身だけ起き上がった。

   思いついた結果が、あまりにも意外すぎて

   口をあんぐりと開いたまま固まる。



   もしかして、僕は。