一旦帰る、と昨日言った通り、は
持ってきた少しの荷物をまとめていた。
それを持って玄関で、見送りをしようというときだった。
心の行方
目の前にあるのは、僕の夢なのだろうか。
「ん・・・っ!」
なんて悪夢なのだろう。
覚めて欲しい。夢ならば、今すぐ。
のふっくらとした、よく話す桃色の唇が
ジョージのそれによって塞がれている。
左手で彼女の頬から口にかけてを覆い、右手で
後頭部をしっかりと固定している。
漏れたの小さく、艶のある声に、その場が固まった。
二人のそれは、とても様になっていた。
の顔は赤かったし、嫌そうには・・・とても、見えなかった。
悪戯な瞳でジョージは一度こちらを見て、また視線を彼女に戻す。
愛しいものを眺めるようなそれが偽者に見えて、何故だか腹が立った。
身体が勝手に動いた。
彼女をジョージから引き剥がし、つれていく。
細い手首を、しっかりと掴んで。
ただ驚いた様子で、は眼を見開いていた。
家の裏につれていくと、ロンは立ち止まった。
皆はついてきていない。二人きりになれた。
掴んだ手首から熱が伝わる。とても熱い。
自分の手が熱いのか、彼女が熱いのかは解らなかった。
ただ、そのぬくもりが愛しかった。
「ロン・・・?」
その声にはっとする。
衝動的に引っ張ってきてしまったが、自分でもなんで
そんなことをしたのかわからない。
何で。何で。頭の中で繰り返した後、顔が熱った。
ジョージにあういう風に触られるをみたくなかった。
至った結論が意味する感情を、知っている。
実に簡単なことだった。
誰もが幼い頃から抱いているものだ。
「・・・気になるのは、」
ハーマイオニーなんだと、思うけど。
「一緒にいて欲しいんだ、君に」
ずっと一緒にいたい。
変わらず、隣で。
掴んでいるところがさらに熱くなる。
「・・・・・・友達でしょ、つまりは」
「違う!」
はっきりしないけど、違うとだけは言い切れるから。
もっと、大切なものなんだ。
「私はハーマイオニーじゃないのよ?」
「そんなの、知ってるよ」
「私は、私なのよ」
涙を薄っすらと浮かべて言われ、少し困惑する。
でもいえる。彼女に、に向かって。
下唇を一度舐め、噛み締める。彼女の泣きたいときの癖。
笑って。見たいのは笑顔なんだ。笑って。
「お願いだから。・・・・・・離れないで」
もっとかっこいい言い方は無いのだろうか、と自分が嫌になる。
僕はまだ未熟すぎて。
君を幸せにするよ、とかそんな大それたことは言えないけれど。
笑っていて欲しい。ただ、それだけ。切に願う。
あの日言った言葉は、今でも変わらない。
一緒にいるから、僕が。もう独りじゃないよ。
「君がいないと、嫌なんだ」
お菓子も、授業も、遊びも、物足りない。
楽しくも無いんだ。上辺だけのもののように見えてしまって。
眺める月が綺麗なのも、君の隣だから。
後悔することなど忘れ、僕の体は忠実に動いた。
触れるだけの口付け。
彼女の顔が紅潮する。先ほどの比にもならないくらい。
ジョージのようにかっこよくは出来ないけど、僕なりの精一杯。
情けないことに、僕は全身の力が抜けてしまった。
それでも、真っ赤になったが
とても嬉しそうに微笑っていたからいいとしたい。
((恋と愛は違う、とはよく言ったもんだよな))
呟いた双子の声は彼らに届くことなく、実に面白げに響いた。