大人でもない、子供でもない。 でもやっぱ比べると、私の方が子供で。 いつもいつも、ちょっと恥ずかしくなる。 原田さんはいつだって私の思っていることを まるで頭の中を覗いたみたいにちゃんとわかっていて。 二手も三手も先を知っている。 クリスマスだってそうだった。 私は原田さんにもらえれば何でもよかったから、何がほしいか と聞かれても、何でもいいですとしかいえなかった。 本当はあるキャラクターのタンブラーがほしかった。 でもそれは幼馴染の平助君がきっときいてくるから そのときいえばいいかな、と思ってたし。 可愛らしいデザインだし、お店にも女の子ばかりだから、平助君と 一緒に買い物したときに交換こすればいいなって。 原田さんがあれを買っているとこなんて想像つかないし、申し訳ないもの。 でも当日、彼はそのタンブラーをプレゼントしてくれた。 平助君と話しているのを聞いて、買ってくれたという。 嬉しかった。大好きな人に、大好きなものを貰って。 雪の降る中、口付けと共に大切なものを貰った。 「ふふ、可愛い」 「何だ千鶴、またそれみてんのか」 「はい」 温かい飲み物が手離せない今の季節。 家でも、学校でも、ずっと持ち歩いていた。 もうちょっと待ってくれ、と苦笑され、待つこと20分。 授業内容がどうしても思い出せないらしい彼は時々頭をかきながら 眉を寄せたり、千鶴を気にしたりしながら、頑張っていた。 教室で日誌を書いている原田さんを待つ間、思い出が溢れるように出てくる。 必死に考えて書いている、決して上手とはいえない字がとても愛しい。 そう思っていたら、このタンブラーを思わず鞄から出していたのだ。 大切な、大切な宝物。 本当は違うものを予定していた彼が、急遽変えてくれたと あとで永倉さんから聞いた。本当にほしいものをあげなきゃ意味がない、と。 その優しさが嬉しい。本当、彼からだったら、なんでもいいのだ。 「原田さんのおかげで、温かいものが飲めて幸せです」 「そりゃよかった。でも気をつけろよ」 何をですか?と聞き返す前に、ちょうど一口ホットココアを飲んだ。 先ほど買ってきた飲み物をつめたばかりだったため、まだ冷めていなかったようで。 「・・・・・っ」 勢いよく飲み口から出てきたココアが、舌に直撃した。 「大丈夫か、千鶴?」 「・・・・っ、ひゃ、い・・・」 「・・・言わんこっちゃねぇ。気をつけろっていったろ?」 「うう・・・」 なるほど、こういう意味だったのか。 ひりひりしている舌に涙目になりながら、千鶴は力なくあやまる。 舌を出して外気にさらして、少しでもと思いつつ冷やす。 すると息を吐く気配がして、シャーペンが置かれた。 「・・・まぁ、こうなったのは俺の責任でもあるし」 目を細めて、微笑う。その顔はとても色気があって。 思わず見とれそうになっているところに ぐ、と身体が近づけられる。 気づいたときには、長い無骨な指が顎をつかんでいて。 端整な顔が、目の前にあった。 「ん・・・・・・っ」 口を開けていたところから、するりと舌が入ってくる。 千鶴のやけどした舌を撫でるように、優しく、なぞる。 感覚が鈍っている分、いつもと違った不思議な感触にぞくぞくとした。 唇が離されたとき、千鶴は肩で息をしながら 荒い呼吸のまま原田をうらめしそうに見つめた。 よりによって、教室でこんなことするなんて・・・っ。 「・・・やけどは舐めても治りませんよ」 けど、大好きな人の口付けが嬉しくないわけがなくて。 千鶴の口からはそんなことしかいえなかった。 「悪ぃ、したくなった。・・・ココア味、だな」 満足そうに笑う原田さんは、悪戯が成功した子供のようで 少し、幼く見えた。 10.02.10