先ほどから何度も同じ問答が続く。
   
   二人しかいない屋上に容赦なく吹き付ける寒い風は辛かったが、
   照らす太陽は暖かくて心地よい。

   先ほど授業が始まったので当分は人が来ないだろう。
   彰や、信子でさえも。


  
   「なぁ、呼んで」

   「誰を」

   「人じゃなくて。俺を、」

   「いるじゃん。しかも現在進行形でお話し中」



   俺が何を言いたいのかわかっているのに、はわざとはぐらかす。
   それが何を意味するかなんて、考えたくないけど俺にもわかってしまう。
   それでも俺は引き下がりたくなかった。


   
   「そうじゃなくてさ。修二って」

   「・・・・・・桐谷でいいじゃん」



   彰は単純だから、名前呼びは特別だと思う。

   はそれを凄く気にしている。
   その証拠に彼女が下で呼ぶのは草野彰ただ一人。(なんて、悔しい)

   の心に占める草野の割合がどれほど大きいか悔しいほど思い知らされる。
   わかってるんだ、どういう返事かも。
   彼女は優しいから、俺に返す言葉を懸命に捜していることも。

   草野のことがずっと好きなに、俺の想いを
   受け入れてくれとはいわないから。




   「・・・名前で、呼んで」









  それだけでいい








   ただそれだけでいい、なにも望まないから。

   草野が野ブタのことを好きだと、が気付く前に。