高校受験の最後の追い上げ、というか真っ只中
翼は近所に住む二つ年上のを
受験終了の憂さ晴らしという名目でつれだしていた。
今日は休日なので、もちろん翼としてはアレのつもりだ。
そんな翼の心など知らず、はころころと表情を変え
何処へ行こうか考えているようだった。
の方も学年末テストへの根詰めで
ちょうど息抜きが必要に見えていたのでいい感じだ。
「いいよねぇ、翼君は」
映画でも行こうか、と映画のチラシを片手に
は口を開いた。
どうやら今日は映画のはしごになりそうだ。
私がそこそこ頑張って入った学校に難なく
入学決定しちゃうんだもん。
そう口を尖らせて呟くに、隠しもせず
翼は笑みを漏らした。
「それなりの努力はしてるからね」
それに、に勉強教えたの俺だし?
意地悪くに微笑む翼に返す言葉もないようで
はうぐ、と言葉につまった。
これでも一応二つも違うんだよ、というのは
の精一杯の反抗だろう。
そんなにクスクスと笑っていると
近くを歩く女二人組が自分たちの方をみているのに気付く。
きゃっきゃと甲高い声で話している会話が耳に入る。
「(みて、可愛い!姉弟かな?)」
「(そうじゃない?うわ、ホント可愛い)」
コソコソと近距離で話される会話は耳を立てずとも
内容が伝わって。
ちょっと不貞腐れているは、きこえていないようだけど。
「・・・年下にそんな扱いうけちゃう私って、」
年下とか、気にしてないけど。
これでも一応、デートのつもりだし?
ぐいっ。
違う方向をみていたの腰を引き寄せる。
一瞬だけ話をしていた二人組に視線をやり、
翼は驚いて言葉が途切れたの口を、自分のそれで塞いだ。
「っんー!」
突然の出来事に動揺して、反抗の声を漏らす。
それでも翼はそれをやめなかった。
(これくらい、当然だよね)
の顔が真っ赤になったとき、やっと翼は
唇を離した。
にっこりと満足気な笑みを向ける。
(っ舌・・・!舌入ってたよ今!しかもここ公道!)
ぎゃーぎゃーと喚きたい言葉は音にならず、
は口をぱくぱくと開けている。
金魚みたいだよ、と呆れるのはもう少し後のことだ。
「・・・姉弟じゃないよ」
ニヤリ、と翼は先の会話の二人組に向かって
微笑った。
二人組の顔が真っ赤だったのは、いうまでもない。
「ほら、早く行くよ」
折角のデートなんだから、と付け加えたことによって
の顔が更に赤くなったが、それ以上に嬉しそうに微笑っていた。
二人組に向かっていった言葉やらに後で小言をいわれるだろうけど
そんなの今は関係ないや。
の手をとって、何事もなかったように翼は歩き出した。
(受験勉強で疲れた俺に、ご褒美ってことで)
やっと同じ学校に行ける。
同じ場所、同じ空間。
肉体の距離を気にしているわけじゃないけど、やはり嬉しい。
これで、蟲がつかないよう見張ってられるしね。
「っ翼くーん、何観ようか?」
この笑顔も、このぬくもりも、一生俺のものだから。