翼の試合を見に来た。
玲さんの計らいで、試合後にスタジアム内部に入れてもらった。
つまり、関係者以外立ち入り禁止の控え室まで行けるということ。
どう説明して許可を得たのかすごく気になる。
差し入れをもって歩いていると、廊下で翼が待っていた。
「おめでと!すごいいい試合だったー!」
「サンキュ」
促されて、そばのベンチに腰掛ける。
「あのサイドからのさっ」
試合の興奮がまだ冷めない。
代表の試合なのだからレベルが高いのは当然だが、今日は個々の最大の力が
出せていたように見えた。そして、なにより楽しそうだった。
だから、もそれに引き込まれるように魅せられて、応援した。
試合内容を熱く語り出すに、翼は噴出すように笑った。
「お前、すごい声だな」
笑うのも無理はない。
あんなに熱い試合を見せられて、あんなにいいプレーを見せられて
その熱を共有しない観客がいるだろうか。
気が付いたら声を出していた。夢中になって応援していた。
「久しぶりに大声だしちゃったよ。すごい楽しくて!」
「それにしてもひどいな」
ガラガラな声のに翼はくすくすと笑う。
少しもごっとした話し方には首を傾げる。
「翼、なんか食べてる?」
「あぁ。さっき玲に飴貰ったんだ。これから会見とか続くし、疲労回復」
「そっか。あ、これ差し入れ」
はい、と手渡そうとして、自分の頭上が陰ったことに気づく。
目の前には、青いユニフォーム。見た目以上に厚い胸板。
そして、の頬にかかる、赤茶の髪。
「・・・・っ」
そう、翼がいっきに距離を縮めていたのだ。
きれいな顔が息がかかるほど近くにあって、どきどきする。
「・・・ちょーどいいや」
言葉と同時。
くい、と顎をつかまれて、そのまま口付けられる。
試合後の上気した翼の身体が熱い。手も、唇も。の意識を溶かす熱。
咬むような口付けに力が抜ける。
すると唇をわられ、熱く弾力があるものが入ってくる。
一緒に入ってきたのは、甘い玉。
「ん・・・ふぁ・・・っ」
その飴玉をの舌の上で転がす。
絡めてくる翼の舌は、飴もも味わいつくす。
立っていられなくなったがかくん、とへたれる寸前に
翼が腰を支えて、唇を離した。
頬を包むように手が添えられ、親指でゆっくりと撫でられる。
「これでもなめとけよ。喉、痛くなる前にさ」
唇を軽くなめて、翼はニヤリと笑う。
満足そうな表情の彼は、見惚れるほどかっこよかった。
・・・って、この飴。
「・・・・・・・!」
さっきまで翼がなめてた、やつ、じゃん・・・!
先刻の行為を実感して、は声にならない抗議をする。
だがほとんどがぱくぱくと口を動かすだけで言葉にならず、
ようやく出てきたのもたった一言。
「な、なにを・・・!」
真っ赤な顔で翼を睨むようにみつめたが、彼はただただ
微笑を深めただけだ。
「何って・・・・・・応援の、お礼」
お前の声よくきこえたよ、と嬉しそうに笑われては
何も返す言葉もなく、真っ赤になって俯くしかできなかった。