誰もいなかった一人のお茶会に久しぶりのお客様。
花瓶が割れたのには驚いたけれど、嬉しい革命かもしれない。
甘いお菓子と籠の鳥
『お茶会に付き合っていただけますわね?』
その言葉にその人は少し面食らった。
しかし、すぐに笑い、・・・喜んで、と返事をして、の向かい側にある椅子に座った。
それを見て、は椅子に座りなおして、その人のためにカップに紅茶を入れた。
一人じゃないお茶会は久しぶりだ。
一体、何日ぶりなのだろうか。
向かい側に話しかけると言葉が返ってきて、視線をやれば人がいる。
あぁ、なんて嬉しいことなの。
「・・・私は、と申します。あなたは?」
「椎名翼です。この近くの別荘にきています」
その人の返事に、はあぁ、と頷く。
この辺りは全く人がいないが、たった一つだけ療養用ということで建てた屋敷がある。
それでも、奥地にあるこの屋敷とはとても離れているが。
そういえば、夏の途中くらいから借りる人がいるというのを、食物を運ぶ
使用人の人が言っていた気がした。
「椎名さんですか。しかし、あの屋敷はここから随分遠くでしょう?
一体どうしてこんな奥に?」
「翼で結構ですよ。サッカーの練習をしていたんです。
休養にきてたんですが、山でやる練習は特に実力に結びつくので」
「サッカーをおやりになるのですか」
「木に当てる練習をしていたら、あまりに変なところに跳ね返ってしまって・・・」
すみません、ともう一度謝る翼。
は気にせず、とだけいうと、紅茶をすする。
・・・・・・・・・・なんだろう、この違和感。
「・・・翼さん。無理に敬語で話さないで結構ですよ。私、久しぶりにあう
同じくらいの歳の人と仲良くなりたいのですから」
「・・・いいよ。わかった」
そういって翼ははぁ・・・と大きく息を吐いた。
違和感が先ほどよりも薄れた気がした。
「敬語って疲れんだよね。ねぇ、さんのは天然?」
「えぇ。私は元々このような話し方ですわ」
「・・・・・・。ここで、いつもお茶会してるの?」
「はい。自然を感じられるテラスがとても好きですの」
サァー・・・、と風が二人の髪を撫でる。
赤銅色の紅茶にかすかに波紋が広がった。
この違和感は何?
この人は何かを隠している・・・?
「さんってさ、“”財閥のお嬢様だよね?」
「! えぇ、そうですわ」
「家族構成は父親と母親。兄弟はいない。
趣味は読書で、特技はピアノだっけ?」
「・・・どうしてそのようなことを?」
「雑誌に書いてあったよ。有名だからね、“”は」
翼はブラウニーを食べながら、平然と言う。
はそんな翼が少し恐ろしかった。
なぜ、この人は誘導尋問のようなことをしているの?
この人は一体何が知りたいの?
とりあえず、は話を変えようと、自分から質問をした。
「・・・・・・・・・・・。翼さんはどちらからいらっしゃったの?」
「東京。今は一応夏休みだからね」
「どちらの学校に?」
「公立の飛葉中学。一応、受験生。関係ないけど」
サラリと言ってのけた翼には驚いた。
なるべく顔には出さないよう努力する。
中学三年!私と同い年・・・。
見かけで判断はできない、というのは本当のようだ。
「では、どうして私を疑ったような目でみているのですか?」
チュンチュン、と小鳥のさえずりが静かに聞こえる。
「特に意味はないよ」
「・・・・・・・。 敬語ではなくなりましたけど、態度が白々しいですわ。
普段の話し方とは違くしていますのが、わかります」
試すような言い方で、は言った。
翼はただ黙っている。
追い討ちをかけるようには少し表情を曇らせた。
「私、そういうの・・・すごくかなしくて・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
これで本性を表すか、とは心の中で密かに喜んでいた。
・・・・・・・・・・そのときの翼の微妙な変化に気付きもせずに。