あの後、やっぱり翼は戻ってこなかった。
翼がいなくなった後のお茶はいつもより味が無く感じられた。
一人だけだった世界に、侵入者かな?
甘いお菓子と籠の鳥
と翼がであって、それから一週間以上が過ぎた。
毎日翼はのところに来て、お菓子を食べて言ってくれる。
・・・砂糖が多いなどの、辛口チェックも大量だが。
「今日のお菓子どうッ?」
の口癖は、これになりかけていた。
今日のお菓子はフルーツケーキとチョコケーキ。
どちらも小さいもので、新しく作ったオリジナルのレシピだ。
「フルーツケーキの方は蜂蜜漬けにしてみて、小さい子が好きなように
いつもは控えめって程でもないけど普通より甘くなくしているのを甘くしてみたの。
どう?甘くなってる?」
「・・・・・・・・・・・」
「でね、チョコの方は反対に控えめな大人の味を目指して、苦くしてみたの。
でも、オレンジの爽やかな香りとベリーの甘さが入っていい感じになるかな、って」
翼は黙って、黙々とケーキを食べていく。
その間にものケーキへの語りは熱くなっていった。
「」
そして、今日も先生の辛口が飛ぶ。
「甘くしてみた?ふざけんなってくらい甘いよ。砂糖丸齧りするより甘いかもね。
こんなのよっぽどの甘党かアリ位だよ食べれるの。歯が溶けそう。
で、反対に苦くしたこっち。苦すぎ。オレンジとベリーの発想はいいよ。
成功したら凄く美味しそうだから。でもね?今の段階じゃ最悪。
これはチョコですか、それとも他の物体ですかって聞かれるよ。
ねぇ、ちゃんと一個試食した?味見したの?」
「・・・・・・・・・・」
「食べてみた結果、これらは食いモンじゃない。とりあえず、俺はそう感じたね。
俺の舌に障害が無い限り、普通はそう感じると思うけど。
この二つは、もっと練習しろ。・・・・以上」
「・・・・・・・・はい」
・・・・なんとも辛い。
あまりの非難と翼の舌の滑らかさにの口からは他の言葉が出なかった。
でも、文句を散々言っているにもかかわらず、手をつけたケーキは
ちゃんと食べきっているのが嬉しい。
この一週間以上の間で、翼とはとても仲良くなっていた。
こんなに直球で本心を言ってくれる人ができて、はとても嬉しかった。
それは分かっているのだが。
そんなに文句を言わなくても・・・、とも一口ずつ食べてみた。
「うわっ!!何これッ、食いモンじゃないよッ」
「・・・・・・やっぱ食べてなかったんだね」
「うわっ、やばいよっ、翼よく食べてくれたね・・・」
「甘くすればいいってもんじゃないの、わかった?」
「うっわー・・・普通に成人病とかになりそう・・・」
自分の作ったケーキのあまりの不味さに、は凄く驚いた。
これを普通の顔して食べていた翼にも驚いたけれど。
は紅茶の隣においてあった、朝食用のコーヒーを翼に勧めた。
朝、が朝食を取っている時に翼がきたので、そのままにしてあったのだ。
もちろん、甘いのをごまかす、エスプレッソ。
翼はそれを優雅に飲み干すと、ふぅ、と息を吐いた。
「・・・・・・で、もうそろそろ話してくれてもいいよね?」
「・・・な、にを、ですか」
「もちろん、について」
さっきの雰囲気とは全然違う、張り詰めたような雰囲気。
場に合わない爽やかな風が、の髪を揺らした。
「随分待ったけど、まだ・・・いえない?」
「・・・・・・いいわ。いってやろうじゃない」
優しい風が葉を揺らし、輝く太陽の下、小鳥が飛んでいった。
そんな中、翼が満足そうに口の端をあげた。