『好きな異性は?』
クラスでやったアンケート。
クラス全員に配り、提案した男子と女子が集める。
そして、書いてある名前の人に渡す・・・・・・というものだった。
バカらしい、と思いながらもは真面目に書いてしまった自分が悲しい。
配られた小さなメモ用紙は、誰かのルーズリーフを小さく切ったもので。
そこに、いつもとは少し違う字で、小さめに書いた。
『 若菜 結人 』
あのとき、はっきりと自覚した。の心の奥にある、本心。
このままずっと・・・・・・・卒業しても、ずっと言うことはないだろう、この気持ちは。
はふっ、と微笑んで、書いた名前を見つめた。
ステップ
最悪だったテスト期間も終わったし、やっと遊びまくれる!
HRも終わり、ざわついた教室の中、返ってきたテストを笑顔で
鞄の中に突っ込むと、はそう叫んだ。
「ねぇ、若菜。あのゲーム返してよー」
前の席で同じように鞄にテストをつっこんでいた奴に、文句の眼差しを向ける。
すると結人はくるっと後ののほうを向いた。
「あ、悪ぃ。ラスボスに手こずっててさぁ、今英士にやってもらってんだよ」
「何それ。普通にやれば大丈夫だし」
「思ったよりレベル高くてよー」
「若菜はさっさと進みたいからって、レベル上げちゃんとやらないからでしょ?」
「・・・・それ、英士にも言われた」
でも、結局楽しそうにやってるのは英士なんだよな、と結人が笑った。
二人で楽しんでやっているのはいいのだが、いい加減返して欲しい。
英雄が私を呼んでいるのよ!とがふざけて言うと、結人は
俺だって忍者が手放せねぇんだよ、と笑った。
「じゃあさこれから、俺んち来るか?」
「え、いいの?」
「英士も来るからよ、多分今日で終わると思うし」
「いくっ!」
は笑顔で頷いた。
英士君も来るんだ。じゃあ、一馬くんもくるかしら・・・ぜひ仲良くなりたいんだよね彼。
あぁ、それよりご両親はご在宅かな、家族の誰か一人に気に入られればこっちのものだし・・・っ!
じゃあ早く帰ろうぜ、と結人が席を立ったので、も後に続いて教室を出た。
ゲームの話で散々盛り上がっていたら、あっという間に結人の家についた。
・・・・・・・相変わらず、でかい。金持ちめ!
結人が鍵を開けると、中は金持ちそうな綺麗な玄関。
彼の部屋とは大違いだ。
「俺の部屋分かるだろ?先行ってテキトーに座ってていいぜ」
「わかったー」
「多分英士いるぜ。今日親出かけてんだ」
そういうと結人はリビングに行ったので、は階段を登って結人の部屋に入った。
「あ、英士君こんにちはー」
「あれ、さん。何で?」
ドアを開けると、汚い部屋の中ベットに寄りかかってゲームをしている英士がいた。
結構ごちゃごちゃしている部屋の中、英士の周りだけ見事に何もなかった。
「ゲームを取り返しに参りました!」
ビシッとは敬礼をすると、英士の隣に座った。
英士はにクッションを渡して、コントローラーを床に置いた。
「これ、さんのだったんだ」
「そうだよ。もうかなり経ってんのにさー」
「・・・・さんいるなら、俺は帰ろうかな」
ボソリといった英士に、は目を丸くする。
薄く微笑んでいるが、何か含んだ感じの笑みだ。・・・・・この人は、表情が読みにくい。
みんな結人くらいわかりやすいといいのに、と思う。あ、でもあれは単純すぎか・・・。
「なんで?英士君がやってるんでしょ?」
「まぁ、そうだけど」
「楽しんでるんだったらラストまでやればいいじゃん」
「・・・・・・・じゃあ」
英士がそういったとき、結人がトレーに飲み物やお菓子を乗せて入ってきた。
スナック菓子や、ペットボトルのままでグラスがないというところが結人らしい。
結人は床にそれらを置くと、ゲームが見えるようにベットに寝転がった。
「さーあ、やりますかー!」
「やるのは英士君でしょ。自分でやる気ゼロじゃん、その体制」
「そうそう、さんの言う通り。その体制で言われてもね」
口を揃えて言う二人に、結人は枕に顔を突っ伏して泣きまねをする。
「・・・・・・・一馬、お前がいないと俺が集中狙いだぜ・・・・っ!」
別にあまりかわらないだろう。
どうやら今日は一馬君は来ないらしい。うーん、残念。
やっぱり英雄でしょ、
いいや忍者だ、
あらやだこんな格好が趣味ですか若菜君、
うるせーお前だってこんなのが好きなのかよ趣味悪ぃー、
まぁ本命は赤毛の彼ですけど、
・・・・・・二人ともゲームやろうよ
結人とが熱く語り、英士がツッコミを入れたとき。
プルルルルルルルル・・・・。
と、電話が鳴った。
「あ、電話」
「あー?もうたりぃなー」
若菜はゆっくりとベットから起きあがる。
「あれ、そこにある子機は使えないの?」
「ぶっ壊れた」
「結人と一馬がクッション投げ合っててね」
「うるせー」
「じゃあ、一階に行くしかないんだ。いってらっしゃーい」
クッションを持ったまま、結人は一回に走って降りていった。
結人がいなくなって、急に静かになった。
すると、英士が口を開いた。
「さん、結人のこと好きでしょ」
あまりに唐突な内容だったので、飲んでいたペットボトルの
中身が口から吹き出るところだった。
「ぶっ!な、何でっ?」
「結人が苗字呼びなんて珍しいし」
「それは女だって思ってないからでしょー」
「俺がいるのに、人を呼ぶのも珍しいんだよね」
「そう、なんだ」
一瞬、英士が怒っているかと思ったが、どうやらそういう話ではないらしい。
・・・・・・うーん、英士君よりも上って、言いたいのかな?
「告白はしないの?」
「ムリムリッ!するわけないじゃん。向こうはうちの学校の人気者。しかもユース!」
「そういうもんかな」
「そういうもんなんです」
そうそう、世界で活躍するサッカー少年で、性格も顔もウケがいいんだ奴は。
そして・・・・・・私は、女の親友と言う立場を、なくしたくないから。
フラれるのはわかってるし。告白したら、少し気まずくなるかもしれない。
とりあえず今は、思いっきり楽しんでいたい。
そうは思っていても、考えてしまってかなり落ち込む。
「・・・・・・じゃあ、落ち込んでるさんにいい事教えてあげるよ」
「何?」
ふっと笑った英士は結人の散らかった机の引き出しから、大事そうに
しまってあった物を取り出した。
一枚の、メモ。
「他のは捨てたのに、これだけは捨てないでとってあるんだよ」
「これ、は・・・・・」
これは間違いなくこの前の・・・・・・・・
「あーもう、うちの親電話長ぇって!」
ガチャリ、と大き目の音を立ててドアが開き、結人が入ってくる。
あまりにも静かな部屋と進んでないゲームを見て、結人は首をかしげた。
「どうしたんだよ、二人して黙って」
「若菜・・・・」
顔が見れない。
こんなもの、とっておいているなんて。
若菜と書いていた女子は多かった。
その中の、一枚。・・・・・私の、字。
それでも、は上目がちに結人の顔を見上げた。
そんなの様子がおかしいと思った結人は、の手を見て一瞬固まり、次に飛び上がるように驚いた。
「わぁぁぁぁーっ!!!お、お前なんでそれを・・・・・・っ」
相変わらずばかでかい声をあげて、赤くなった結人はの手からメモを取り返そうとする。
しかし、その前に英士がの手からひょいっ、とメモを奪った。
「俺が見せた」
「英士・・・・てめぇ・・・っ」
「攻略本とるときに一緒に出ちゃったんだよ」
「嘘つけコラッ!!攻略本はベットの上にあんだろうがァァァッ!!」
結人はかなり怒って怒鳴るけれど、英士には当然敵わなくて。
その後すぐに静かになったけれど、逆にその沈黙が辛かった。
「ねぇ・・・・なんでとってあるの?」
は恐る恐るきいた。
いや、本心が勝手に出てきた、に近いのだろう。
すると結人はの方を振り向いて、あーとかうーとかえーとか散々唸った。
「・・・・・・・告白だから」
「は?名前書いてないよ、これ」
「字でわかる」
そうはっきり言ったが、実は自身は半分くらい。
こういうときのは、結人からみれば表情が読みにくくて。もしかしたら
違うのかもしれないけれど。・・・・・・・・・でもこの勘は、結構当たってる自信がある。
「俺もこいつのこと好きだから、なんとなくわかるんだよな」
「名前ないのに、わかるわけ・・・・・・」
そうだ、名前が書いてないんだ。字だけで分かるはずがない。
分かったとしても、彼の口からの名前は出てこないだろう。
「これさ・・・・・・お前だろ?」
「違う。わ、私のじゃない。字も違うしね」
は首を振る。冷静を装っているが、内心はもう逃げたいくらいだ。
わかるはずない。
ノートはたくさん貸しているけれど、結人がの字を覚えているわけがない。
癖は残っているかもしれないが、字は変えている。そこまで見てる人もいないだろう。
そんなを珍しく真剣な眼差しで見つめている結人。
・・・・・・・あー、どうすっか・・・。
これを言うのはかなり恥ずかしいけれど、言わなければは気付きもしないだろう。
そしたら、このまま進展せずに親友で終わるのだ。
英士と仲良さそうに話す姿を見て、嫉妬する理由もないことになる。
さりげなく、結人の前だけでを下の名前で呼んでいる英士に、文句も言えないままだ。
「違くねぇだろ。この字の癖、お前のだし」
図星を指されて、はかなり驚いた。
しかし、それでもまだ悪あがきで違う、と首を振る。
若菜が、私の字の癖まで覚えてるなんて・・・・・・・っ。
恥ずかしい。告白なんてしないつもりだったのに。バレてしまった、私の気持ち。
すると結人はしょうがねぇなぁ・・・といった感じで、大きく息を吐いた。
「・・・・・・あぁ、もうっ。じゃあ言い直してやる。俺は、この字を書いたと思われる奴が、好きなの」
「・・・・・・・・・っ」
「この字を書いた奴がお前だと思ったから、とっておいてるわけ!」
「そ、う・・・・・・」
「絶対告白されないと思ってたから、すっげーうれしかったわけっ!」
「・・・・・・・・・・・・・っ」
どうしよう・・・・・っ。
これって、つまりは・・・・・・アレだよね?
ついに真っ赤になったと、照れてるけれどの表情を崩すことができて嬉しそうな結人。
点描が飛ぶ、甘い雰囲気ができかけたとき・・・・・・・。
「あのさ、二人共。俺いること忘れてるよね」
「「・・・・・・・・っ!?」」
英士がボソリと呟いた。・・・・・・・・今まで二人の仲で、彼の存在は完璧無視だった。
は更に赤くなり、急に立ち上がる。
「わっ、若菜っ、ゲームはもうちょっと後でもいいやっ!じゃっ、じゃあ私帰るからっ」
「えっ、おいっ、!?」
結人が手を伸ばして引き止めても、は振り返ることなくそのまま鞄を持って帰っていった。
「・・・・・・・・・・・・・英士」
「あーあ、さん帰っちゃったね、残念」
「お、お前のせいだろうがァァァァ!!!」
半泣き状態で結人は虚しく叫んだ。
・・・・・・・まぁ、これで一歩前進したんじゃ?
英士は微妙に黒い笑みを浮かべながら、ゲームを再開した。